精神科医が深読み。任天堂が「ゼルダの伝説」に込めたメッセージ

 

本題よりも充実した世界

ここで、このゲームには「最終ボス」がいて、その最終ボスを倒すために、数人の「中ボス」を倒したり、ミッションをクリアしたりしなくてはなりません。しかしその本道とは別に、クリアしなくてもいいミッションがたくさん存在します。本道でやることが5とするなら、本道以外のやることが100くらいあります。

たとえばクリアすると体力やがんばりゲージが増える「ほこら」というものが100近くありますし、また見つけると、武器を持つ量が増える「コログの実」という要素が、ゲーム内に1,000コ近く存在しています。もうどっちが本道か分からないレベルです。

また外を走っていると、鳥や動物がたくさんいます。敵ではないため何の害もないのですが、弓矢を使って撃つと肉が手に入ります。それもあり、もう見つけるたびにバンバン撃ってました。そのためゲームの後遺症として、鳥や歩いてる人を見ると撃ちたくなります。「人間は別ではないか」というツッコミが出るかもしれませんが、とにかくそう思ってしまうのでしょうがありません。後遺症というより純粋な病気ではないかと思います。

またゲームでは「高いところから飛び降りて、パラシュートのようなもので遠くまで移動する」という演出もありますが、現実でも、同じく高いところに来ると飛び降りたくなります。自分は108歳まで生きるつもりですが、万一にもそれ以前に死んだ場合、「あぁ、ゼルダの伝説にハマりすぎて実行してしまったのだな」と思っていただければ幸いです。やりません。

走り回ることの喜び

何にせよ、ゲーム時間の90%くらいは、ただ荒野の中を走り回ってるだけなんですけども、それでもぜんぜん飽きません。「ゲームといえば敵と戦うのがメイン」みたいなイメージがあるものですが、ここでは敵が存在しない荒野を走るだけで、十二分に楽しさや発見を感じられるわけです。ゲームのサブタイトルが「ブレス・オブ・ザ・ワイルド」で、日本語にするなら「野生の息吹」ですが、本当に、「野生の世界を感じる」ことこそが、このゲームのメインテーマであり、そして何よりの醍醐味ではないかと思います。

ちなみに「コログの実」を見つけるためには、思わせぶりな配置の石を動かしたりして、小さな謎の生き物を発見する必要があります。ここで「石を持ち上げたら、その下からその生き物がでてきた」という場合、その後で必然的に持ち上げた石を降ろすわけですが、その際に降ろした石がその生き物にゴツンと直撃し、生き物が「ウッ」という苦しみの声をあげる、という心憎い演出もあります。そんな!そんなつもりなかったのに!

純真無垢なプレイヤーの99%が強制的な加害者になるため、良心の呵責で悩んだ彼らは「いやこれはミスではない、こういう世界なのだからしょうがない、よし、もっと敵を倒そう」みたいな思考をし、さらにゲームにハマっていく…。そんな制作者さんの狙いがあるとしたら言い過ぎでしょうか。言い過ぎです。

何にせよ世界を歩くだけで楽しいゲーム。これは本当に感動的でした。冗談抜きで、今までにプレイしたゲームの中でも、インパクトと強烈さではベストに入るかもしれません。

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