【カンブリア宮殿】JR東日本が高輪ゲートウェイで仕掛ける攻勢

2020.01.26
by tututu
 

そんなJR東日本が手がける客目線のサービスは他にもある。例えば新幹線の車内清掃。新幹線が折り返すわずかな時間で驚きの車内清掃を繰り広げる。世界的に知られる清掃チーム「テッセイ」だ。顧客目線のサービスを徹底するJR東日本。しかし、かつてはその対極にあった。国鉄時代、毎年のように繰り返されたのは、労働組合が待遇改善のために行った大規模なストライキ。その結果、国鉄は、何万人もの利用者を置き去りにした。そんな光景を見つめていた一人が、入社したばかりの冨田だった。

「ストライキがあることでお客様の信頼を失い、お客様の数も減ってしまう。するとますます赤字も大きくなる。本当に悪循環だったと思います」そんな国鉄が積み上げた莫大な債務はついに37兆円に。その一方で犠牲となったのが、地方の人々の足を支えてきたローカル線。採算が取れないと次々に廃止されていった。当時、冨田が勤務していた九州の鳥栖駅では、九州各地から集まってきた貨物列車が、ストのせいで何日も足止めを食っていた。このままでは膨大な量のミカンが傷んでしまう。気が気ではなかった冨田。しかしその心配は無用だった。トラックが運んで行ったのだ。

「モータリゼーションが進んで、鉄道に頼らなくても物は運べるし、人の輸送も車や飛行機の時代になりつつあった。ショックを受けました。『こんなことではやっていけない』と」(冨田)そんな危機感が、徹底した顧客目線のサービスを生むことになった。

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鉄道会社が起こした革命~6900万枚Suicaの秘密

鉄道会社のJR東日本が世の中を一変させたサービスがある。マクドナルドでも支払いに使われているSuica(スイカ)。今や多くの人が財布代わりに使う必需品となっている。2001年、JR東日本がサービスを開始したSuica。当初は切符を買わずに
電車に乗れるICカード乗車券として登場したが、今ではバスに乗れるのが当たり前なら、自動販売機で飲み物だって買える。使える場所の広がりは尋常ではない。Suicaのサイトを見てみると、コンビニ各社、「ヨーカドー」に「イオン」、「ドン・キホーテ」に「ららぽーと」、ドラッグストアに様々な外食チェーン…日光東照宮でも使えるという。今や6900万枚が流通し、生活に欠かせないカードとなっているSuica。実は、その躍進を支えたのが冨田だった。

冨田は当時のことをスタジオでこう振り返っている。
「ICカードを乗車券として使う発想自体はかなり前から研究されていたのですが、お客様が改札を通るスピードは非常に速い。0.8秒以内に情報を読み取って新たな情報を書き込む技術が必要でした。電子マネーとしては、私が担当部長だったので、いろいろな企業に売り込みに行ったのですが、なかなかその利点が分からず、導入をためらう方が多かった。一番最初にSuicaに興味を持っていただけたのは、ファミリーマートの当時の社長で『話を聞きたい』と。そこからスタートしました」

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