新型コロナウィルス帰国者に韓国人が行なったデモのどんでん返し

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全世界に衝撃を与えた大韓航空機爆破事件から今年で33年が経ちますが、当時発見できなかった事故機の残骸が発見されたというニュースが韓国で話題となっているようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴31年の日本人著者が、遺族らのソウルでの動きを伝えるとともに、文在寅政権が引き上げ作業を開始するとは思えない理由を記しています。

爆破されたKAL858便が海の底に見つかる

皆さんはご記憶があるだろうか。1987年11月29日、イラクのバグダッドを出発してソウルに向かう大韓航空(KAL)858便が、インド洋上で空から消えた事件。「まゆみ」で有名になった北朝鮮工作員キム・ヒョンヒによる空中爆破テロ事件と結論付けられたものの、真相は今もまだはっきりとはしていない。「まゆみ」ことキム・ヒョンヒ氏は、韓国の男性と結婚して(たぶん)平穏な日々を過ごしている(はず)。たまにテレビに出て、インタビューに答えたりしているけど、おそらく24時間体制で、彼女を守る警護員が数人(国の税金で)つけられている。

彼女は、「あの事件は、自分が金正日の指令を受けてやったものだ」と何度も言っている。88年のソウルオリンピックにダメージを与えるために北がやったことであることはほぼ間違いないのだが、当時の韓国政府が(北をはめるために)やったものだという主張もあったりして、真相のほどはまだ明確にはなっていない。

インド洋において当時も捜索活動が繰り広げられたけれど、飛行機の残骸などは見つからないまま捜査打ち切りとなっていた。それが最近の報道によると、KAL858便と見られる飛行機の残骸がミャンマー沖で発見されたというのだ。これは、大邱(テグ)MBCが報道したもので、まだ帰れていない乗務員と搭乗客合わせて115人の行方がわからない状態だ。事件が起きて33年目となったけれど、海に沈んでいる残骸の中には遺骨があるかもしれず、政府は一日もはやく残骸の引き上げをやるべきだと遺族とKAL858便事故民間捜索チームがソウル光化門(クァンファムン)政府ソウル庁舎前で記者会見を開き、シュプレヒコールを繰り広げている。

ただ現政権があまりにも北寄りであることはご存じの通り。この政権が積極的にあの事故機を調査し、引き揚げ作業を開始するとは思えない。北(金正恩)の顔色をうかがってばかりで、できるかぎり、そっと、そうっとしておきたいのだ。北を真正面から刺激するような行動をすぐにとるとは、思えない。

時も、33年も前のKAL機捜索よりも、もっと焦眉の急がまっている。新型コロナウイルスだ。

1月31日(金)の午前8時、武漢からの帰国者368人を乗せた飛行機が金浦空港に着陸した。発熱のうかがえる18人はすぐに病院に収容され、残る350人のうち、200人は峨山(アサン)の国家公務員人材開発院に収容され、残る150人はジンチョンの同施設に収容された。14日間の隔離生活がはじまる。

奇跡的なのは、アサンの住民らが死に物狂いで反対していたのが、31日の未明あたりからSNSの呼びかけで、「われわれは同じ国に住む一つの民族だ。同じ家族だ。われわれが彼らを抱擁してやろうよ」という垂れ幕まで登場するくらいまで180度急変したこと。武漢から帰ってくる僑民も、どれだけ心休まったことだろうか。

「皆さんを歓迎します。ごゆっくりお休みください」という垂れ幕をバスの中から涙をもってみていたにちがいない。わたしの妻など、このニュースに接して激しく泣いていた。

「お前らは来るな」の怒鳴りから、「わたしたちが抱いてあげよう」にまで変化したのだから。

もすかすると、コロナウィルスによって新たな感染が発生するかもしれない。しかし、そんなリスクよりも人間愛のほうが勝った形になったのだ。拍手以外のなにものもない。無事に14日間の隔離生活を終えて、家族のもとに帰ってほしいところだ。

image by: Sidowpknbkhihj, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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