オフィスにも~バスクリンの新戦略
岐阜・大垣市のデイケア・センター「ゆったりデイ はすの湯 小泉」では、ある画期的な取り組みをしている。それがお風呂。一人で入浴するのが困難な人も、介護士の力を借りて入ることができる。車いすで入浴できる特別な風呂もある。
そこにやって来たのは、「お風呂博士」と呼ばれるバスクリン製品開発部の石澤太市だ。バスクリンでは、こうした施設に、効果的な入浴法を教える活動を行っている。もちろん、入浴剤の効果的な使い方も伝授する。
一方、攻めの営業にも乗り出している。営業企画課の阿部貴之が入浴剤を持って向かったのは、大手メガネチェーン「JINS」の本社。訪ねたのは福利厚生の担当者。「オフィスきき湯」の営業だ。
「オフィスきき湯」は、企業に入浴剤をまとめて購入してもらい、福利厚生の一環として社員に提供してもらおうというもの。「日経デザイン」の調査によると、入浴剤を全く使わない人は4割以上もいた。市場の開拓余地は、まだまだある。
「初めてこの話を聞いて、率直に面白いと思いました」(「JINS」総務人事グループ・堀友和さん)
試しに置いてもらうと、社員の反応は上々。普段は意識しなくても、実際に商品を見ると、入れてお風呂に入りたくなるようだ。「座り仕事なので「肩こり・疲労」と、冬場は肌荒れが気になるので、2種類選んでみました」「一人暮らしなのでお湯をためることが少ないんですけど、お湯をためてお風呂につかろうかなと思います」と、「きき湯」を手に取っていた。
~編集後記~
子どものころ、入浴剤といえばバスクリンしかなかった。お湯に、きれいな色と、香りが加わり、新鮮で、お風呂に入るのが楽しくなった。
日本を代表するロングセラーだが、複雑な経緯も持つ。長い間、ツムラと一体だったが、まず分社化され、ファンドが入り、結局大手製薬会社に買収された。後発競合とのシェア争いもあった。それでもバスクリンは生き残った。
「きき湯」をヒットさせ、ツムラ時代からの自然・健康志向はいまだ脈々と息づいている。バスクリン、記憶に刷り込まれたその名の響きは、気持ちまで温かくさせる。
<出演者略歴>
古賀和則(こが・かずのり)1954年、広島県生まれ。1977年、創価大学卒業。1979年、津村順天堂(後のツムラ)入社。2006年、ツムラ ライフサイエンス社長就任。2010年、株式会社バスクリンに社名変更。
(2019年12月12日にテレビ東京系列で放送した「カンブリア宮殿」を基に構成)