加害者放置が止まらない
多くのいじめ事件で、加害者の指導はどうしているかという問題がおざなりになってきた。
前述挙げた事例の全て、加害者に対する指導はせいぜい「口頭注意」程度のみであり、その後、いじめ行為が強化されていることから、全くの逆効果になっているのだ。
そして、加害保護者が歪んだ保護姿勢によって、本来、いじめを咎めなければならないのに、全く注意もせず、更生の機会も与えずに、いじめを推奨する行動を取っている。
人間は環境動物だというが、このような環境の中で物事の善悪を身につけることはできないであろう。自分が悪いことをしても、脅したり、専門家を雇い入れれば良いというくらいしか、親の行動から学べることはないのだ。
さらに、学校が行ういじめ加害者へのプログラムなどはほとんど活用されていない。
多くは、「いじめはやめましょう」というメッセージが回りくどく描かれたDVDか、声が大きく少々怖がられている教員が指導をする程度だ。
東京都足立区のケースのように、刺青男の恫喝に負け、校長室を脅迫現場にしてしまう無茶苦茶な学校もあるわけだ。
いじめ防止対策推進法の契機ともなった大津いじめ自殺事件は高等裁判所の司法判断(民事訴訟)が問題となったばかりだ。報道によれば、いじめを止めることができなかった保護者にも責任はあるとして、賠償額が10分の1になったと報じられた。23日、最高裁へ上告ということになったが、司法の判断も実に頼りないとしか言いようがないだろう。
こうした話が出てくると、多くの識者は「警察に介入させればいい」と、簡単にいうのだが、少年法があり、ぐ犯・触法少年程度の事件としかならないいじめ事案においては、学校や教育委員会でやってくれという本音が伺える対応しか得られていない。
例えば、横浜市教育委員会は3月の発表で男子生徒が女子生徒の服を脱がせ動画を撮って拡散した事案をいじめで処理したと報告している。この記者発表では、再発防止に努めるとだけ発表したが、具体的に何をするのか、そして何をしたのかは明確になっていない上、事実上、何もしていないのが現状なのだ。
つまり、学校や教育委員会はいじめ加害者や犯罪行為をやってのけた児童生徒に対して、全く指導力も更生に導く力も失っているし、要となる警察もいじめ問題には積極的に介入していないのである。
加害者にも人権があることは当然だ。だからこそ、人権に配慮しつつ、可能な限りの更生をさせるために教育しなければならないのではないか。
平和に争い事から距離を置いている多くの日本人から見て、この現実はどのように映るだろうか。私には、異常としか思えない。
いじめの研究をしている精神科医によれば、いじめの加害者は、支配型関係嗜癖(しはいがたかんけいしへき)という広義の共依存であり、脳の形状もいじめを続けることで変化するという病だという。
仮に治療の余地があるのであれば、積極的に取り入れ、二度と過ちを犯さないようにしなければならないだろう。
さらに付け加えれば、いじめ被害者はさらに何の支援策も示されていないケースが圧倒的に多い。学校に行けばいじめられ、誰も助けてはくれない。身体的な苦痛以外にも疎外感や無視による存在否定が続くのだ。身の安全を図るため、不登校となれば、教育を受ける機会もなくなる。
フリースクールに通えという人もいるが、整備されていない地域も多いし、後ろ指差す小社会もある。そして、フリースクールはただでは無い。それなりの塾程度の費用は必ずかかるのだ。