高評価のクオモNY州知事、ブレる安倍首相。何が欠けているのか?

 

一方で日本の場合ですが、加藤勝信厚労相は、最初のうちは必死に会見をやっていましたが、「危機が深化する中では組織防衛的なニュアンスが出ると炎上するだけ」ということが見えてきたので、後ろに引っ込んでいるのは正しいと思います。また、菅官房長官については「有能なのに安倍総理が外しているのが間違い」という解説がありますが、そういうことではなく、決してこの方もリスコミが得意なわけではないと思います。

政治家の場合、リスコミということでは、小池都知事の評価が上がっていますが、彼女の場合は築地問題がいい例で、批判者、チャレンジャーとしてのスキルはあるわけです。ですから、政府がモタモタしていて、それを批判するという構図に持ち込むと強い、ですが、自分として確たる方針があるのかというと、どうも怪しいわけです。その証拠に、会見を毎日やっていますが、その話術はテレ東時代同様にプロ級ですが、内容は薄いです。

安倍総理に関しては、「マスク配布+星野源ビデオ」で叩かれているわけですが、そうではなくて、会見において準備不足のために、どうしても内容が薄くなり、説得力が出ないということが最大の問題であると思います。

というわけで、日本の場合はアメリカとはまた違う意味で「専門家」にリスコミの役割が回って来ています。ですが、その使われ方としては、アメリカとは違って、どうも妙な格好となっています。

ズバリ、尾身茂、押谷仁、西浦博の3名は、本当に多忙の極致の中でよく頑張っておられると思いますが、政治や官庁としては、この3人にリスコミを押し付け過ぎと思います。

例えばどうして「3密」はダメなのか、「クラスター潰し」の戦略は何が目的なのか、「クラスター潰し」がプランAで「接触削減」がプランBという「方針転換」がされたのではなく両者は連続している、といった基本的な問題について、どう考えても安倍総理はブリーフィングを受けて100%理解しているとは思えないのです。

また、理解が十分でないことから、いつの間にか目標が違ってきてしまうということもあります。例えば「80%」がいつの間にか「70%」になって、それが結局は達成できないとか、要するに政治の中で目標設定がズルズル後退してしまうわけです。

そこで危機感を持った西浦教授などは「8割おじさん」などというニックネームで呼ばれることを受け入れて、「噛み砕いて話さないといけないレベル」のリスコミまでも背負わされてしまっているわけです。これはマズいと思います。

一方で、あくまで「何もしなかった場合の警鐘」として挙げた「42万人死亡」という数字が独り歩きして、西浦教授を叩く動きすらあるわけで、こうなったら何をかやいわんやという感じです。

大切なのは、自分が納得するまで、そして応用編の質問にアドリブで対応できるまでに十分なブリーフィングを受けて、政治家がしっかり危機管理の中心に立つことです。安倍政権は末期的ということが言われていますが、ポスト安倍を考慮してゆくのであれば、少なくともそのスキルと姿勢を持った人材に絞って議論すべきと思います。

NY州のクオモ知事が行う毎日の定例会見が評判になっていますが、これは死者数などネガティブ情報に向き合っていること、数字の見せ方が上手なこともありますが、とにかく「内容の100%以上を理解して喋っている」以上でも以下でもないところが成功しているだけです。しかし、その程度で大統領への待望論が出るというのは、ちょっと困った感じというのが正直なところではあります。

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