戦争もコロナ対策も「空気」で決める日本。エリートがなぜ道を誤る?

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敗戦してからの日本は令和になった今も変わらず「空気」で物事を決定する社会です。空気を読めない子どもはいじめられることもあり、大人になってからも上層部の空気で決定したことは覆せない。そういった日本の社会を変えていくにはどうすればいいのか。無料メルマガ『「二十代で身につけたい!」教育観と仕事術』の著者で、現役小学校教師の松尾英明さんが一冊の本を挙げ、考えを述べています。

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空気の教育

ここ数回、戦争に関する記事を書いている。そこで読者の方に勧められて、次の本を読んだ。

● 『昭和16年夏の敗戦』猪瀬直樹 著/中公文庫

元々は1983年の刊行の単行本なのだが、つい最近、文庫の新装版が出た次第である。著者はご存知、元都知事でもある猪瀬直樹氏である。

極東裁判でも取り上げられた「総力戦研究所」という組織の全貌について書かれている。そして研究所によって「日本必敗」を正確に予測していながら、なぜそれを止められなかったのか。戦争の裏側について学ぶことができるのだが、それ以上に、今に通じる問題がここにあるという点においても、一読の価値ありの本である(今の日本では諸外国に対し「日本必敗」だろうと予測している人は、決して少なくないはずである。しかし、それを自ら止めようとしていないのも現状ではないだろうか)。

最高の頭脳と判断力と道義心を備えた人間が集まっても、誤った判断になってしまうのはなぜなのか。素晴らしい組織が、どのようにして「死んで」いくのか。
その仕組みがわかる本である。誤った戦争に突っ込んでいってしまった経緯も、読むとよくわかる。

ちなみに「歴史」という単語を聞いただけで「苦手」「無理」「わからない」と毛嫌いする人もいる。人によっては「数学」や「物理」「化学」なども同じ扱いかもしれない。これらは「宗教」「政治」などにも通じていえる。

なぜ嫌いかというと、実は「わからない」からである。わからないことは、怖いから嫌いと感じるだけなのである。

幽霊の正体見たり枯れ尾花

という有名な句があるが、わかれば怖くなくなり、嫌いでもなくなる。「話してみたら意外といい人だった」というのも、全く同じ原理である。

「とにかく戦争反対。ダメなものはダメ」というだけで、自分には特に知識や考えがないと思うなら、読んでみることをおすすめする。誰もがダメとわかっている戦争に、突っ込んでいく「空気」がわかる本である。

戦争になったのは誰か特定の人が悪かったからだという思い込みや刷り込みがある場合にも、ぜひ読んで欲しい本である。

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