会社に一生飼われるつもり?コロナ時代のフリーランス生存戦略と3つの留意点

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働き方改革やコロナ禍によるテレワークの普及でダブルワークは当たり前になった昨今、「いずれは副業を本業にして独立を」と考える人が増えています。これに関して「フリーランスは企業に飼われている会社員とはまったく異なる」と指摘するのは、週刊誌記者・CNN本社勤務ディレクター・大手ネットメディアプロデューサーなどを経て、現在はエッセイストやBAR評論家として活躍するたまさぶろさん。たまさぶろさんはメルマガ『たまさぶろの人生遊記』の中で、自身の豊富な経験と実績をもとに、会社員がフリーランスへ転身する際の留意点などを詳しく解説しています。

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フリーランスの歴史と意義

時として「自由業」と表現される「フリーランス」は、忘れ去られた「バブル期」には憧れの職業でした。

役所や会社などの組織に束縛されない働き方、コピーライター、フォトグラファー、ミュージシャン、コンサルタントなどクリエイティブ系のカタカタの肩書、そして著名人に代表される高収入…フリーランスとしての働き方こそが、憧れのゴールという時代もありました。

その後、バブル崩壊や長期デフレ、リーマンショックと続いた日本経済力の低下により企業は外部への委託費を絞り込み、代わってすでに雇用済の「企業戦士」を酷使する「ブラック企業」が主流に。企業から外部への発注が激減、フリーランスの魅力も意識される機会を失いました。

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しかし、日本を代表する広告代理店・電通が引き起こした労働基準法違反と新入社員の自殺という事件は、労基署からの是正勧告および同社社長の引責辞任に発展、日本社会に「ブラック企業」と「働き方改革」という言葉を定着させました。これにより各企業とも従業員の労働時間削減に邁進、よって外部への業務委託が増加する傾向を生み出しました。

また会社組織の規制緩和により、「副業、複業促進」という副産物も。サラリーマンでありながら、フリーランスとしても業務遂行する潮流も珍しくなくなります。

これにより、「フリーランスは一握りの限られた働き方」と目され、会社員として企業に縛られないと「生きていけない」という概念が崩れ、現在は副業や業務委託専門の募集サイトも珍しくなくなりました。

2020年に入り、そこへ追い打ちをかけるように新型コロナ・ウイルスが世界を席捲。会社員は出社停止でテレワークという事態も珍しくなく、自宅で仕事をするのが「普通」という感覚が定着すると、「通勤しない=会社の束縛なし」という認識が広がり、会社員とフリーランスの間を隔てていた心理的障壁が取り除かれました。

20世紀には「フリーランスへの転身」は「会社を辞め、ひとりで喰って行く」という覚悟を強いられたものですが、現在は副業としてフリーランスの業務を追加していく…という移行期間を設けるにも無理のない時代。テレワークにより物理的に移動することもなく「定時で本業を終了し、以降は副業の時間」と切り替えられる環境も整えられました。

時代的にも「ひとつの企業を務め上げ、定年で退職金をもらい」という昭和、平成の生き方は崩壊。60歳の定年まで勤務しても「人生100年時代」、残り40年を無収入で生きて行くのは、そうとう難しいでしょう。もちろん、フリーランスに定年はありません。そう考えると、令和の今、フリーランスとしての働き方は必ず視野にいれるべき人生の選択肢と言えそうです。

「働き方改革」と「新型コロナ・ウイルス」により、一億総フリーランスという時代がやって来るかもしれません。

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フリーランスとフリーターの違い

日本では「フリーランス」と名乗ると、「フリーターですか?」と問いかけられるケースもありますが無論、大きな勘違いです。

そもそも「フリーター」は、完璧に単なる和製英語。具体的には、主婦と学生を除き、パートやアルバイトで生計を立てている方を指します。かつては34歳までの若年層という定義も存在したものの、現在ではその限りではありません。英語では「part timer」「part time job」と表現されるようにfull time employでない方々を指します。

一方「フリーランス」はれっきとした英語。「フリーランサー=free lancer」は元来「束縛されない槍騎兵」を意味しています。中世の傭兵をさした言葉が、そのまま職業を形容する言葉に派生したとされます。英語ではフリーランスの代わりに「self-employed」や「independent」とも表現されます。

決定的な違いは、フリーターが依然、雇用主の下に属しているのに対し、フリーランスには雇用主がなく、自身が主(あるじ)である点です。また、日本社会において、フリーターが往々にして時給制であるのに対し、フリーランスは成果に対価が支払われる点でしょう。

さらにフリーターの勤務地はコンビニなど特定の場所に拘束されるケースが多いのに対し、フリーランスは自宅やスタジオやコンサート会場などなど、自らの職務を遂行できる場所なら、どこでもその活動拠点となります。

こうした言葉の意味を突き詰めて行くと、アルバイトやパートに対して「フリー」つまり「自由」という言葉を当てはめるのは、矛盾であり本末転倒に思われますね。職業認識の段階で、フリーランスの方にとっては、「フリーターと混同されるのは、ごめんこうむりたい…」となるのも無理からぬ流れです。

特にフリーランスのライターさんは略して「フリー・ライター」と口語で名乗る機会も多く、これが「フリーター」と響きが近いだけに、誤解されるケースが山積。やはり略さずに「フリーランス・ライター」としたほうがよろいしいでしょう。「フリー・ライター」はあくまで「自由な」書き手の意味であって、「無償の」という意味ではないので、発注主はゆめゆめ勘違いされませぬように。

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業務委託は「請負契約」と「委任契約」

フリーランスの業務は、会社組織などからの業務委託により成り立ちます。会社と雇用契約を締結するのではなく、対等に個人事業主として業務を請け負います。業務委託はもちろん企業間でも成り立ちますが、この場合は企業と個人での契約締結となります。

契約書にも「業務委託契約書」と見出しされることは多いのですが、実際には「業務委託」は通称であり、本来は「委託契約」もしくは「請負契約」に区分します。

「委任契約(時として準委任契約)」は、実際に遂行することが業務となりえる職種です。例えば、弁護士、医師などの士業が主にこれにあたります。相談したり、診察してもらうと、その時点で契約が成立、対価が発生するわけです。時として、コンサルタントなども成果物を要求されない場合は、こちらに属します。

「請負契約」は、わかりやすく、成果物と引き換えに、その対価が支払われる契約形態です。ジャーナリスト、コピーライター、フォトグラファー、デザイナー、ミュージシャン、コンサルタント…カタカナ職業のほとんどが、その成果物、つまり記事であり写真であり絵画であり楽曲でありという「作品」を納品することで、報酬を得ることになります。現在では、プログラマーやITエンジニアもこちらに該当するケースが多いと思われます。

成果物に対価が支払われるのですが、成果物を提供する側も心に留めておきたいのは著作権についてです。記事や写真を提供しても、著作権では「原著作者」という考え方が残ります。一旦、記事や写真を提供したので、無限にコピーされ配布されても問題ないかというと、そうではありません。

20世紀と異なり、現在はデジタル社会ゆえ、際限なくコピーが可能なのですが、こうした行為は原著作者の許諾のもとに行われるべきです。もちろん、あらかじめ契約書に『二次使用』などについても記載されているケースは昨今多く見受けられますが、成果物を譲渡する際、自身が原著作者である点については、しっかり認識しておくべきでしょう。

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業務委託受注に必要なスキルとネットワーク

フリーランスは、企業に飼われている会社員とまったく異なります(もちろん、副業としてフリーランスの方は別ですが…)。会社員は一旦、企業に所属してしまえば、自動的に給与が支払われます。極端な表現になりますが、有能だろうが無能だろうが、同じ福利厚生が企業から提供されます。有能、無能、出世により支払われる給与にちょっとした差が生じる程度です。昭和の時代に確立されたこの企業システムは、令和の現在、大きな歪みとなって現れています。

有能な人材ほど起業、独立、転職などと流動し、より自身に見合う報酬を得て行く傾向が強くなっています。業務遂行能力に欠ける人材でも、一度何かの拍子に企業に潜り込んでしまえば、定年まで居座り、退職金というボーナスまで受け取ることができる昭和のシステムは機能しなくなっており、今となってはこのシステムそのものが大企業を筆頭に会社組織を蝕んでいると言えるでしょう。

しかし、独立しフリーランスとなるには、他者と差別化された価値とスキルを有する必要があります。そうしたスキルを身に着けているからこそ、フリーランスという道を選ぶのでしょう。よってフリーランスとなるためには、そのスキルをまずは会得する必要性に迫られます。

また、そうした業務を任されるネットワークも不可欠です。現在では、サイト上でさまざまな企業、業務執行者と出会い、新しい仕事を任される自由度は上がっているものの、業務を委託してくるネットワークを構築する必要があります。

コネクションもまったくなく、突然フリーランスに転身された方は、滅多にいらっしゃらない、もしくは皆無に等しいのではないでしょうか。フリーランスの業務は、信頼に値するスキルとネットワークの上に構築されているとして過言ではないでしょう。

将来、フリーランスを目指している…という方は、こうしたポイントに重きを置き、活動されることをオススメします。スタートから派手にデビューされる著名フリーランスの方も見受けられますが、必ずしも自身がそちらに属するとは限りません。独立とは生半可な決意では難しいものなのです。

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フリーランスへ転身する際の留意点

サラリーマンからフリーランスへと転身される方も多いはずです。この際、留意しておく点がいくつかあります。

まず絶対的にオススメしておきたいのは、ローンを使用するなどの大型の買い物です。特に住宅ローンなどは、サラリーマンとしての固定収入が永続するものという発想のもとに組まれています。キャッシュで住宅を購入できるほどの貯蓄があれば、なんら問題はありませんが、住宅購入などを想定されている方は、独立前に済ませておくべきです。フリーランスに対する金融資産の信用度は、ゼロと表現してかまいません。

クルマも同様です。フォトグラファーのように機材を担いでの移動を強いられる職種の方は、ローンを利用してクルマを新調するのでしたら、お早めにご手配のほどを。もちろん、こちらもキャッシュでお買い求めの方には問題になりません。

しかし、フリーランスに転身するからには、若干業務に依頼が少なくとも生き延びられるよう、それなりの額の貯金は残しておきたいのも実情です。どんなお仕事も「月夜の晩」ばかりではありませんので、心に刻んでおきましょう。

また、健康保険も「国民健康保険」に、そして「国民年金」へと切り替わります。こうした項目は、会社員として勤務する際は「天引き」というありがたい(?)言葉により、ほぼ自動的に執行されているがゆえに、気にかけることがない方々も多いことかと思われます。

しかし、フリーランスへと転身すると、こうした手続を含め、すべて自己責任で管理しなければなりません。こうした社会保障を含め、すべての責任は自身に帰すため、不備を誰か他人に押し付けることもできません。

デザイナーやミュージシャンなど芸術家気質の方は、こうした書類手続きなどを軽んじる傾向にあるため、「知らなかった」ではすまされないので、用心が必要です。この際、こうした書類手続きに長けた配偶者を得るなども、「ひとつの方法」と言い張るフリーランスの方もいらっしゃいます。

そして、最後に絶対に避けては通れないのが「確定申告」です。こちらは完全にフリーランスの方ではなく、副業を営む方も同様です。会社員だけしていれば、年末調整の書類をそろえる程度で税金の支払いから保険の調整まで、ほとんど会社任せで仕切ってもらえます。

しかし、毎年3月などの期末になると、フリーランスの方々の阿鼻叫喚がSNSなどにあふれる通り、申告は義務となっています。あまりたくさん稼ぐ方などは、正確に申告しなければ「脱税」の汚名まで降って来ることになりかねません。こうした手続面を含め、あらかじめ想定しておく社会的手続きは多いのです。

フリーランスで生計を立てる方は、往々にしてセルフマネジメントに長けた方が多いので、大きな問題に発展するのを見かけることはありませんが、やはり芸術家肌の方は、こうしたお役所的作業に苦手意識があるのか、毎年苦しんでいる呟きを目にします。

還付金が戻る嬉しいケースが多いのですが、フリーランスにとって最後の難関がこの「確定申告」でしょうか。まさに「ラスボス」な感じです。事務手続きの苦手な方からは「フリーランスの鬼門」とまで呼ばれていますので、認識を改めておいてください。

現代は「完全なフリーランス」という働き方ばかりではないと思われます。今後は会社員でありながら、フリーランスでもある…という方が、極めて珍しくなくなり、むしろますます増えて行く時代になるでしょう。「古くて新しい働き方」、フリーランスは、さらに今後の時代を担って行く存在となるに違いありません。

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駆け出しの週刊誌記者から CNN 本社勤務ディレクター、全国紙との業務提携を果たした大手ネット・メディア・プロデューサーをこなすなどメディア流浪者が、BARの話のみならず、1990年代に過ごした NY 時代の創作や旅行記などいくつかのチャレンジを含めた「人生遊記」をお届けする。

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