読売が報じた「尖閣諸島は開戦4日で中国の手に落ちる」は本当か?

 

まだ日米の専門家の話を伝えるレベルの読売記事

ここ2年ほどの読売新聞の軍事問題の記事は、それまでと比べて飛躍的に充実してきた印象があります。記者も順調に育っているようです。数年前、老川祥一会長に「読売には軍事がわかる記者が一人もいない。なんとかしなければならないのではないか」と言ったことがありますが、老川さんの号令がかかったのでしょうか、読売は一気に能力を高めている印象です。

しかし、それでもまだ日米の専門家の話を伝えるレベルにとどまっていることは指摘しなければなりません。上記の記事で言えば、中国がどんなにハイテク兵器を開発し、実戦配備しようとしても、その兵器が高度化し、種類と量が増大するほどに、それを支える軍事インフラの立ち後れが、いかんともしがたい問題として立ち塞がってくるのです。

例えば、「空母キラー」のミサイルの目標を発見して追跡するための偵察衛星。ミサイルが届く範囲の西太平洋を常に監視するためには、北極・南極の上空付近を回る三つの軌道に、数十基ずつ衛星を配置する必要があります。中国は軍事衛星を増やしていますが、この体制には程遠いのです。

読売の記事では、中国の海軍力が米国を凌駕したとの記述がありますが、これについては9月10日号で西恭之氏(静岡県立大学特任准教授)が「米報告書『世界最大の中国海軍』は誇張」として、自分たちが戦闘艦艇に数えていない小型の中国艦艇まで含めている事実を指摘し、米国側公表資料の牽強付会ぶりが明らかになっています。米国は、国内の予算獲得と同盟国の危機感を煽る目的で、そのようなデータの出し方をすることがあるのです。

記事に出てくる専門家で、そこまで理解している人はいません。読売新聞には、以上のような点まで踏み込んだ記事を期待したいと思います。(小川和久)

image by: JHVEPhoto / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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