コンビニの原点「便利さ」で差をつけたセブンイレブンの巧みな戦略

 

小売業が本来やるべきことは何か?

コンビニに限らず、小売業ではどうしても、販売する商品が似通ってしまい、立地条件や値段の安さでの勝負になりがちです。こうなると、いかに多くの店をだせるか、という出店合戦になったり、TポイントやPontaポイントでの販売促進での勝負になってしまいます。こうなると、顧客視点からするともはや、どの店で買っても同じ、というみられ方になります。

しかし、もともとコンビニエンスストアの原点は、読んで字のごとく「便利な店」です。先ほどあげたセブンイレブンの取り組みには、そもそもの原点に立ち返り、顧客の利便性が向上できる付加価値を出そう、という動きが見て取れます。

そんな中でさらに、セブンイレブンが、リアルの店舗から出て、消費者に直接接近しようという試みをしています。2020年7月から、東京都内40店で、スピード宅配の実証実験を始めました。日経新聞によると、記者の方がこのサービスを試したそうで、まずスマホで専用サイトを開き、注文をすると、ショートメッセージが届き、自分で選んだ指定の場所に取りに行く、というステップです。これで、注文から受け取りまで約1時間ですむ、という便利さです。

配送にもこだわっているそうで、単発で仕事を請け負うギグワーカーではなく、業務提携した企業の方が届けるのも特徴です。記事によると、セブンイレブンの担当の方は、「すぐ食べたい“即食”という、コンビニ本来のサービスに期待し、20代の男女など新しいセブンの利用客が増えた」とのこと。また、無人のセブンとして自動販売機を設置したり、過疎地で閉店してしまったコンビニの近くに、移動販売車を出して売るということもしています。

これらを見ていると、セブンイレブンは、自社のコンビニエンスストアという定義を、「便利に買いに来ることができる場所」を提供することから、「場所を選ばす便利に買える」いうコンセプトに、変容(=トランスファー)したのです。

どうしても、場所にこだわると、先ほど書いたように「売れ筋商品」を厳選しなければ、とか、値段を安くしようとして、ライバルと似通った手法になってしまいます。24時間営業がだんだんとなくなる傾向にあり、ネット通販も台頭してくる中、市場が変わっていくことに適応して、「いかに便利にセブンイレブンで買ってもらえるか」という原点に立ち戻って、できることはないか、と考えての施策ということが読み取れます。

ビジネスでは、変化に適応できた企業が生き残ります。その意味でも、臨機応変に変化に対応する、セブンイレブンの姿勢に学ぶ点が多いですよね。

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