「中国頼り」が招いた悲惨な現状。バブルに浮かれて勘違い、コロナで浮き彫りになった北海道の“依存体質”

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新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大きな打撃を受けた観光や旅行業界。特にインバウンドで多大な恩恵を被ってきた北海道は景気が極端に冷え込みました。なぜここまで深刻になってしまったのでしょうか。危機管理アドバイザーとして、さまざまな研究や講演を行う古本尚樹さんがインバウンドに傾倒したがゆえの北海道の現状と、これからの課題について論じていきます。

プロフィール:古本尚樹(ふるもと・なおき)

北海道大学大学院医学研究科社会医学専攻地域家庭医療学講座プライマリ・ケア医学分野(医療システム学)博士課程修了 博士【医学】。東京大学大学院医学系研究科外科学専攻救急医学分野医学博士課程中退。防災・危機管理アドバイザーとして、さまざまな研究や講演を行う。専門分野は新型コロナウイルス対策(住民・自治体・企業対策、従業員の健康、企業業務継続計画[BCP]等)、危機管理、災害医療、自然災害防災対策、被災者の健康等。

個人HP https://naokino.jimdofree.com/

新型コロナで深刻な状況に陥った北海道

新型コロナの影響は北海道の基幹産業である、観光や旅行などの産業に壊滅的な影響を及ぼしている。今、札幌市内の歓楽街ススキノは以前と様相がすっかり様変わりしてしまった。

札幌のみならず、北海道全体の景気は極端に冷え込んでいる。コロナ関連での道内の倒産件数はこの原稿を書いている段階で30数社にのぼっている。

その少なからずが観光やレジャー、また海外からの観光客をメインにした(更に顧客対象を海外向けに変えた)飲食店などだ。

スキー場などのリゾートや中国からの観光客を見込んだ老舗寿司店、またDUTY FREEをメインにした中国資本のドラックストアまでが観光地の小樽等から消滅した。

この波及的な影響は北海道では深刻だ。札幌市内中心部ではそのドラッグストアのみならずコンビニエンスストアに至るまでが、閉店に追い込まれている。

観光従事者の外国人まで職を失い困窮する現状

札幌の奥座敷、定山渓温泉街では今(2021年2月3日)、ホテルをはじめとしたほとんどの宿泊施設が休業している。年間当たりの利用者の減少は50%と半減している。休業にともなう給付金対象から漏れる業種・小売店での経営における影響も看過ならない。

函館も朝市や湯の川温泉におけるGOTO延期の影響は大きく、やはり観光客はまばらである。こういう風景は道内のほとんどの温泉地で変わらない。「閑散」この言葉以外見つからない。

新千歳空港は国際路線拡大に北海道など関係機関が尽力して、昨年長距離線として復活した欧州路線も、このコロナの影響で今は運行されておらず、観光客の入りが止まったのと連動して、道内の観光産業も動きが止まっているのだ。

道内のうちニセコなど後志地区、また最近では富良野などでは外国人資本が入り、外国人の居住者・従業員が増えている。ニセコではオーストラリア人から人気が出て、今では多くの外国人が居住して、働いていた。

その彼らが失業者になっている。道民のみならず、観光従事者の外国人も職を失っているのだ。かれらは容易に帰国もできないために、NPOなどによるフードバンク等から食事支援など受けて、生活している人が少なくない。

観光資源が豊富な北海道においてそれを糧に商売ができることは幸せな事だと思う。利用者が国内における枠に限界があって、そこから海外特にアジア圏、中国からの大量の観光客を取り込んでいることでのメリットは、道内観光関係業界にとって大きかっただろう。

しかし、それへの依存体質に傾倒しすぎたこと、また万が一、そのインバウンドが失われることを想定していない危機管理意識の薄い商いへの警鐘として、今回のコロナの影響は考えられる。

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