なぜ公的機関のアンケート調査はデジタル化されず手作業のままなのか?

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政府はデジタル庁を創設し、さまざまな業務の効率化に向けて動いているようですが、行政や公的機関の仕事の多くは、デジタル化とは程遠いところにあります。その中の一つ、公的機関のアンケート調査は今でも一部を除き手集計、手入力のままです。その呆れた理由を解き明かすのは、メルマガ『j-fashion journal』著者で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。坂口さんは、デジタルな投票システムには大きな可能性があると見ていて、アパレル販売員のモチベーションアップへの活用法やニッチな民間短観などを提案しています。

なぜ、アンケートを手作業で行うのか?

1.効率化、経費削減のニーズがない

コロナ禍で、保健所が未だにFAXを使っていることが分かり、世間は驚いた。なぜ、もっと効率的なシステムを使っていないのか。民間企業なら、業務の合理化は経費削減に貢献し、利益を増やすことにつながる。どの会社も無駄の削減に一生懸命だ。

しかし、公的機関はそうではない。経費削減や効率化をしても、職員の給料が上がるわけではない。むしろ、これまで認められてきた多重入力を合理化すれば、人員と予算を減らされるかもしれない。役所の予算は、予定通りに支出することが大切であり、経費削減は評価されない。

同様の理由で、アンケートも手作業が残っている。アンケートをデジタル化すれば、アンケートの回収、分析、グラフ化まで自動化することが可能だ。アンケート業務を外注していても、外注先は安定した仕事を確保したいので、新たな仕組みを導入することは期待できない。

発注する側の役所も、新たなシステム構築の予算を申請するのは面倒だし、合理化により、予算や人員が削られては困る。かくして、旧態依然とした非効率的なアナログ手法は生き続けるのである。

2.アンケートのデジタル化

実は、アンケートのデジタル化は難しくない。しかし、アンケート調査の費用は高止まりしている。その理由は、公的な仕事は合理化する必要がなく、最も頻繁にアンケート調査を実施しているのは公的機関なのだ。

民間のアンケート調査も、多くの場合は公的機関と同様の結果となる。既存の業者は既存の手法を守ろうとし、発注する側も予算化している事業を継続しようとする。前例を踏襲するのが、最もリスクがないのだ。

単発でアンケート調査をする場合には、安価なデジタルアンケートシステムが使われている。例えば、ミスコンの投票や、アイドルイベントなど。QRコードでアンケートのWEBページに誘導し、そこで投票してもらう。短時間のレンタルが可能で、即座に集計することができる。

使ってみれば、とても便利だが、ビジネスに活用するという発想はない。手作業が当たり前のアンケート調査と、キャンペーンで使われる投票システムが同じとは思わないからだ。

私は、デジタルな投票システムを活用して、業務改善や売上改善につなげられないか、を考えてみたい。

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