ダメージ加工はアリでも「不良品」は捨てる日本のアパレル業界の矛盾点

 

3.サステナブルな野良着

サステナブルとは「持続可能」なこと。本気で持続可能な服を追求するなら、一着の服をボロボロになるまでツギハギして着ることではないだろうか。

これを実践していたのが、江戸時代の野良着である。藍染め木綿のきものは、当時の物価に換算すると10万円程度だったようだ。決して安くはない。

なぜ、藍染め木綿を使ったのか。それは、丈夫であり、虫避けになり、紫外線を防ぎ、けがをした時にも化膿しにくく、皮膚病になりにくかったためである。農民だけに留まらず、あらゆる職業の労働着として藍染め木綿が使われていた。

洗剤のなかった時代、抗菌性は非常に重要な機能だった。麻も絹もウールも天然の抗菌性を持っているが、コットンは持っていない。しかし、藍染めにすることで抗菌性を獲得したのである。そのため、水洗いだけでも、臭いも出にくいのだ。

最初は丈の長いきもの(長着)に仕立てても、やがて、半着になり、何度も仕立て直しを繰り返し、破れた部分にはツギをあてたり、あるいは別の布に替えて、究極のパッチワークのような野良着になっていった。

藍染め木綿の野良着は、昭和まで続いたが、やがて合繊ジャージーに代わっていった。その段階で、全国の藍染め産業は淘汰された。

藍染め木綿は高級な剣道着として生き残ったが、最近は剣道着にも合繊ジャージーが進出してきた。

サステイナブルと言いながら、世の中は安い商品を求め、結果的に化石資源に依存している。合繊の服を合成染料で染色した服を、合成洗剤で洗い、合成香料のタップリ入った合成柔軟剤で仕上げている。

4.キズ、ムラを個性として許容する

そもそも、合繊や合成洗剤が普及した後で決められた品質管理基準を、江戸時代から続く藍染め木綿が守る必要はあるのか。というより、守れるはずがないのだ。

そこで提案。藍染め木綿に関しては、キズやムラを個性として認めてしまうのはどうか。不良を排除しようとせずに、製品にしてしまう。すると、キズだらけ、ムラだらけの「不良」製品が出来上がる。一般の人は、そんな「不良」製品を見たことがないはずである。ここで考えてもらう。なぜ、ムラができるのか。なぜ、織りキズができるのか。

そして、不良ではなく、個性として認めてもらう。このときに、製造工程の動画を見てもらうのも良いかもしれない。

そして、必要に応じて修理を行う。修理用の端切れ、藍染めの糸をつけて、自分で修理を行ってもらうのも良いし、ワークショップのような形で集合して修理してもいい。

ここまで行うことで、江戸時代から続くサステイナブル文化を体感できるのではないか。

■編集後記「締めの都々逸」

不良と呼ばれた 悪ガキだけど 凄い個性と 認めてく

アパレル業界で働いてきた身にとって、「不良品を認める」ことは、凄い発想の転換です。でも、考えてみれば、貴重な材料を使って不良が出たから捨ててしまうというのは、あまりにも勿体ない。そもそも、不良が出るような工程なんですから。

ダメージ加工と称して、わざわざキズをつけるならば、ついてしまったキズを認めることもできるはずです。一点もののダメージ加工の方が面白いじゃないですか。ダメなところを楽しんでしまう。どこか、アフターコロナの生き方にも通じるかもしれません。(坂口昌章)

image by: Shutterstock.com

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