一般常識的に考えれば、健康志向の高まりは野菜の売上をアップさせそうなものですが、そうとも言い切れない現状があるようです。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、健康ブームがかえって野菜の売上を下げる理由を解説。そこから見えてくるのは、この時代ならではとも言える、食品市場と人々の意識の変化でした。
健康志向が高まると、野菜が売れなくなる!?
健康ブームが長く続いています。というより、定着したのでしょうか。テレビ番組・ネットサイト・雑誌では、健康に関する情報が、毎日溢れています。次から次へと、“身体に良いこと”が紹介され、これを実践すると、1日24時間でも足りないくらいです。
特に女性は、健康情報に敏感です。「健康=美容」という意識が働くのか、見聞きするものは片っ端から試したくなるようです。
中でも“意識高い系”の女性は、「お洒落な健康」に目がありません。出掛ける前は「スムージー」を飲み、バッグには「酵素」を入れて持ち歩きます。食事は、サラダ中心。見事なまでに健康志向です。
そこまで意識は高くなくとも、普通の人も健康志向は持っています。できる限り、身体に良いことをしようとします。
しかし、体操やスポーツは気合いを必要とするので、食べるもので健康になりたいと願います。脂の多い肉類や炭水化物を避け、野菜中心の食事を心掛けるようになります。
意気込んで、しばらくは続けますが、やはり挫折するのが人の常。外食で野菜を摂ることは容易いのですが、自宅で調理するのは面倒。そこで、人びとが行き着く先は、「サプリメント」なのです。
野菜の代わりとなったり、魚の効用があるサプリメントが次々と登場しています。高い効果が証明されているものも多くあります。「EPA&DHA」「青汁」「ユーグレナ」「セサミン」「ローヤルゼリー」「酵素」……。これらを摂っていれば、食事を気にする必要はない。と、人びとは思い込み、結果的には、野菜さえ食べなくなってしまうのです。
サプリメントの市場規模の推移を見ると、どれだけの人がサプリメントに頼るようになってきたかがわかります。手軽に“身体に良いもの”を摂取できるのは良いのですが、食の偏りが激化するのではないかと危惧します。何も気にせず、好きなものを食べるようになります。
手間の掛かる調理はしないので、野菜を食べるのは、調理済みのサラダか外食のみとなります。つまり、食材としての野菜を買わなくなるのです。調理の面倒な魚を買わなくなったことと同じです。家で食べなくても、外で食べれば良い。サプリメントで補えば良い、となるのです。
食材というのは、各家庭で使ってこそ、大量に消費されるものであって、スーパーや飲食店で使われるものだけでは、たかが知れているのです。外で食べて、家でも使うことが、食材の消費へと繋がるのです。
健康志向でサプリメントを摂るようになれば、食材、特に野菜が売れなくなってきます。非常におかしな話ですが、これは現実なのです。
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