スピーチのプロが気づいた、物も言葉も「捨てる」という行為が価値を生む事実

 

選ぶために必要な条件

Dさんに、3つだけあれば良い、と説明するには、先程のように、丁寧に理由を説明する必要がありました。

「量が多くてたっぷりあることは、豊かである」これに間違えはないと思いますが、

別の角度から考えて「数は少なくとも、必要なものだけ、一つ一つを大切にする」も豊かであることに違いはないでしょう。

後者の考え方を推し進めれば「一つ一つにかけがえのない価値を見出す」とも言えます。

1人で、限られた時間で話すスピーチは、どう見ても後者です。

だから、多くの話材があったとしても、その中から、今回の聞き手にとって「聞いてよかった」と思ってもらえる必要なものだけを選び、そのほかの余計なものは捨てていくのです。

ことばそのものにしても、同じことが言えます。モノをよく知っている人の話は、確かに博識で面白いかもしれませんが、ことば少なに、でも、心を込めて訥々と語る人の話には、全身が釘付けになることもあります。

何かが「伝わる」ときには、量の多さだけでは測りきれません。質、そして、その奥にある、もっと根源的な何かが、伝わる力になっていくのです。

どうやって選び、捨てるのか

「たくさんある中から、いいものを選びましょう」という漠然とした制限だけでは、いい選択はできません。

多くを捨てるわけです。それには勇気もいるし、まさに決断を迫られます。

先程のDさんのスピーチでいうならば「聞き手の心を打つエピソードを選ぶ」が多くを捨てる理由づけになりますが、これだけでは、人は行動しづらい。

具体的に「いくつ選ぶのか?」そして「なぜその数なのか」に納得すれば、選べる、捨てられるようになります。

つまり「選ぶ目的」「選ぶ数」これらの制限を具体的に言語化しておけば、捨てる決断ができるようになります。

私が今回行ったダンシャリでは、洋服に関しては、こういう制限をかけました。

「このハンガークローゼットに収まる15着にする」

15着の理由について詳細説明は省きますが、要は、ギシギシのクローゼットにはしたくなかった。

洋服屋さんに行くと、お店のハンガーに掛かっている服は全部素敵に見えます。

もちろん、選び抜いた服を、プロが並べているからそう見えるのですが、よく見ると、一つ一つの服を、隙間を開けて並べています。

隙間がある、一つ一つを際立たせている、だから、素敵に見える、とも言えます。

私も、そうしたいなあと思ったんです。

そして、量的制限だけではなく、質的な「選ぶ理由」を決めました。

どんな視点で選べば良いのか。

それを「未来の自分が着る服を選ぶ」にしたのです。

これは、断捨離の提唱者であるやましたひでこさんがテレビ番組の中でおっしゃった

「未来に連れていきたい服だけ、選んで!」

という言葉に、グッと来たんです。

未来に連れていきたい服かあ…いいことば!って。

明確に言語化することによって、行動することへのエンジンがかかり、目指すところに向かって動き出すものなんだなあ、と、今回つくづく思いました。

「服を減らしたい」
「いらない服を捨てよう」

これは「希望レベル」のことば。ずっと思っていました。でも、完結しなかった。

その理由は、言語化が中途半端だったんです。

「服を減らす」
「いらない服を捨てる」

と言い換える必要があった。

でも、これだけでも実行に移せない。

「GW中に、今ある服を5割減らす」

期間を決め、数量を限定できてこそ、目標設定と言える(なんだかビジネスちっく)。

ここまで明確に言語化できないと、ダメなんです。

そしてさらに、減らした服、つまり、捨てる服の行き先をどうするのか?いわゆるアフターフォローについても、決めておきました。

いつ、どのくらいの大きさの段ボールに詰めて、何時の宅急便に乗せるか?

段ボールの入手先などの具体的なことまでアクションプランにまで落とし込み、それに日付をつけておきました。

ここまで決まれば、あとはやるだけ!

こうして、今、クローゼットがスッカスカ、心地よい空間が生まれた、というわけです。

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