御用“返上”学者、尾身会長の反乱に激怒。菅首相の五輪強行ウラに安倍氏の影

 

だが、政府は分科会に諮問する気は毛頭ない。官房副長官を議長とし関係省庁や東京都の幹部職員、大会組織委員会で構成する「新型コロナウイルス感染症対策調整会議」でこと足りるというのだ。感染症対策の専門家は、あくまでアドバイザーとして二人が入っているだけ。これでは心もとない。だからこそ、尾身会長は専門家による提言を発表したいというのだ。

経済との両立は可能と甘くみていた菅首相のコロナ政策はこれまで失敗を重ねてきた。「専門家のご意見をうかがいながらやっている」と、その責任をなすりつけられてきたのが分科会だ。このまま五輪に突入し、変異ウイルスの集中、分散で日本が世界のコロナ情勢を悪化させるようなことになったら、専門家は何をしていたのかと批判される。今のうちに、言うべきことは言っておかねばならないと思ったのだろう。御用学者と評され続けてきた尾身氏ら分科会メンバーの、並々ならぬ決意がうかがえる。

ところが、これについて、田村厚労大臣は「自主的な研究の成果の発表だと受け止める」と、相手にしない姿勢を示した。露骨な拒否姿勢である。首相への忖度も度を越している。

菅首相が東京五輪の成功に自信満々かというと、そうではない。もし大失敗に終わったら…と募る不安を癒し、「五輪決行すべし」と勇気を与えてくれるのは、やはり旧来の盟友たちである。

その一人、高橋洋一内閣官房参与は5月4日に菅首相を訪ね、30分余り話し込んだ。元財務官僚の高橋氏は第一次安倍内閣の官邸スタッフだったころ、当時の総務大臣、菅氏に、ふるさと納税のアイデアを授けたとされる。おそらくこの30分あまりの間に、五輪開催を強く進言したに違いない。

高橋氏はそれから5日後のツイッターに、日本と各国の感染者数を比較したグラフを示したうえで、「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」と投稿し、世間の批判を浴びたため、内閣官房参与を辞任した。めっぽうアタマがいいわりにはお調子者の高橋氏が、菅首相との共鳴音の一部を聞かせてくれたようなものである。

ご丁寧に、菅首相や高橋氏の思いを総括してくれたのは、竹中平蔵氏だ。菅首相とは竹中総務大臣、菅総務副大臣としてコンビを組んだ小泉内閣以来の付き合いである。

「オリンピック、やるかやらないかって議論を何であんなにするか、私にはよくわからない」「世界のイベントをたまたま日本でやることになっているわけで、日本の国内事情で世界のイベントをやめますということは、やっぱりあってはいけない」(6月6日、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」)

竹中氏の発言には、開催国の都合に左右されるようでは、オリンピックの権威が損なわれるというIOCサイドに立った見方がにじむ。ヨーロッパの覇権意識の名残を斟酌しているのだろうか。

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