ほとんどの経営者がたどり着けぬ、松下幸之助「人使い」の真意

 

松下幸之助さんの人のつくり方 

では、どのように「人をつくる」のかを詳しく知る寄る辺として、達人であり、グルである松下幸之助さんの言を続けて拝聴します。

「好ましい人材の育成をはかろうと思えば、経営者自身にしっかりした社会観、事業観、人生観といったものがなくてはならないと思います。そういうものがあれば、それにもとづいた使命感が生れてくるでしょう。そうなれば、従業員に対しても『この会社はこういう使命感を持っている。この使命を達成していくところに、会社の意義もあるのだ。だから皆さんは、この使命を十分理解して、その達成のために大いに努力してもらいたい』ということがいえると思うのです。そういうことを聞けば、“なるほど、この会社はこういう使命をもっているのだな。自分が働くのは、その使命達成のためであって、自分のためだけでないのだ。これは大いにがんばろう”といったものが生まれてきやすいと思います。そうなれば、おのずと人は育ってくるのではないでしょうか」

では、松下さんは、どんなことを“使命”としたのでしょうか。

「産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには、物資の生産に次ぐ生産をもって、富を増大しなければならない。水道の水は価(あたい)あるものであるが、通行人がこれを飲んでもとがめられない。それは量が多く、価格があまりにも安いからである。産業人の使命も、水道の水のごとく、物資を無尽蔵たらしめ、無代に等しい価格で提供することにある。それによって、人生に幸福をもたらし、この世に楽土を建設することができるのである。松下電器の“真使命”もまたその点にある」

続いて「人使い」については、「自分では決してそんなつもりはないのですが」とことわりながら「なぜだろうと考えてみますと、一つ思い当たることがるとして」こんな感慨を述べられています。

「それは、私には部下が、みんな自分より偉く見えるということです」

「ずっと社長なり会長という職にありましたから、いろいろ注意したり、ときには『君あかんやないか』とボロクソにしかりつけたことも少なくありません。けれどそれは職責においてやっていることで、しかりとばしながらも、内心では“この人は自分より偉いな”と思っているわけです。そんな気持ちで接してきたから、人使いが上手いなどと言われるようになったのでないかと思うです」

「『自分の部下はいい人ばかりで、本当に喜んでいるのだ』というような方のところは、みな成績もあがり、商売もうまく行っています」

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