EUの「2035年までにガソリン車販売禁止」に産油国はどう動くか?

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EUは2035年にハイブリッド車を含む新車販売を禁止し、「国境炭素税」を導入すると各紙が報じています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では、著者でジャーナリストの内田誠さんが、「国境炭素税」について報じた過去の記事を検証。10年前にも検討されながら見送られた事情と変化した部分や、今回の導入計画により影響を受けるであろうEU外の国の動向に注目しています。

EUの「2035年にガソリン車の新車販売禁止」を新聞はどう報じたか?

きょうは《毎日》から。EUが2035年にハイブリッド車を含めてガソリン車の新車販売を禁止し、「国境炭素税」を導入する計画を発表したとのニュース。【セブンNEWS】でも取り上げました。

言い方はいくつかあるかもしれませんが、《毎日》が採用している「国境炭素税」で検索を掛けましたら、《朝日》のデータベースで10件ヒットしましたので、これを対象に。まずは、《毎日》2面記事の見出しと【セブンNEWS】第4項目の再掲から。

EU 国境炭素税導入へ
ガソリン新車 35年に販売禁止

欧州連合委員会は、2035年にハイブリッド車(HV)を含むガソリン車の新規販売を事実上禁止する法案を発表。電気自動車(EV)シフトを加速させる狙い。併せて脱炭素が進んでいない国からの輸入品に課金する「炭素国境調整措置」(国境炭素税)導入案も。

以下、記事概要の補足。EUが掲げている温室効果ガス削減の目標は、2030年の排出量を1990年比で55%減らすこと。そのため、カーボンプライシング(炭素の価格付け)の一手法である「国境炭素税」の導入も今回の計画に盛り込んだ。

国境炭素税は、二酸化炭素排出量に応じて輸入品に課税する制度。「排出削減対策のコストを負わない安い製品が輸入されるのを防いだり、EU企業が規制の緩い国々に生産拠点を移すのを防いだりする」ことによって、二酸化炭素の排出削減を促すもの。国境炭素税の対象は、鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力の5製品で、26年から徴収を開始するという。

【サーチ&リサーチ】

*検索された中で最初の記事は2017年のもの。炭素税についての議論はそれよりも前から行われていた。

2017年5月4日付
タイトル「(記者有論)攻めの温暖化対策 国境炭素税で途上国支援を 香取啓介」の記事。「香取啓介」氏は《朝日》の国際報道部兼科学医療部所属の記者。「炭素税」に関する議論が再燃しているとして、次のように書いている。

「国境炭素税は、製品製造に多くの排出が必要な国には輸出のハードルになり得る。実は10年前後に米や欧州で検討されたが、途上国からは保護主義的だと批判が出た。しかし、現在は状況が違う。パリ協定ですべての国が今世紀後半に排出の「実質ゼロ」を目指す仕組みができた。最大排出国で、かつて強硬に反対していた中国も排出量取引制度を導入し、炭素に価格をつけている。そこで、各国の理解を得やすくするために、国境炭素税の税収の一部を、途上国の温暖化対策支援に振り向けてはどうか」

*パリ協定という新しい水準で、国境炭素税を途上国支援に使うというアイデア。このとき、まだ「新型コロナウイルス」は影も形もなかった。トランプ米政権は、この前提である「パリ協定」からの離脱を通告したのは記憶に新しい。そしてコロナ禍のもと、次のような記事も。

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