新国立競技場が「ホワイトエレファント」=無用の長物と海外に揶揄される理由

 

【サーチ&リサーチ】

まず、「ホワイトエレファント」の意味について、《朝日》の「天声人語」(2017年7月13日付)に教えを乞うことにしよう。

由来は「タイの王様が気に入らない家来に白い象を贈った故事」らしい。「飼育に大変なお金がかかるが、捨てるわけにいかない。家来は必ず落ちぶれた」というから、白い象を贈られた家来は恐怖で顔面蒼白となったに違いない。

天声人語が「ホワイトエレファント」に擬するのは、五輪関連施設。2004年開催のギリシャ、アテネの競技場は「草木が伸びるまま放置されている」といい、人語子は「古代五輪の発祥地ギリシャで毎回開いてもいい」と、「聖地化」を提案する。持ち回りで世界中に「無用の長物」を残していくのではなく、毎回同じ場所で集うことにも意味があるのではないかと。例えば日本の高校スポーツ界では、ラグビーは「花園」、野球は「甲子園」と決まっている。聖地ゆえの盛り上がりもあるのではないかと。

*以下、《毎日》の過去記事から。まずは2015年。ザハ・ハディドから隈研吾に設計者が変わった後に書かれた記事。五輪競技会場がどこでも「無用の長物」になっているとして、次の記述。

2015年12月22日付
「建設した巨大競技会場は大会後の利用に苦しみ、世界各地に「ホワイトエレファント(無用の長物)」を生み、世論の反発も招いてきた」と。

*続いて、『オリンピック経済幻想論』(アンドリュー・ジンバリスト)についての松原隆一郎氏による書評の中で、五輪の運営費が膨張する理由についての以下の記述。

2016年8月7日付
「エコノミストが産業連関表による経済効果の推定なるものを持ち出すが、それは「巨大イベントのプロモーション用」に過ぎないと著者は手厳しい。観光客は多く見積もりすぎ、04年のアテネ大会など1日当たり10・5万人を見込んだのに1・4万人しか来ず、新築した施設は「ホワイトエレファント(無用の長物)」となって、新たなギリシア遺跡と化した。つまり短期的には赤字、長期的にも利益は見込めず、効果の多くは都市イメージ等の質的なものに止(とど)まるのである」と。

*小池都知事は、むしろ「ホワイトエレファント」を否定する文脈で使う。リオ五輪が全日程を終えた後の記事では、小池知事の次の発言を拾っている。

2016年8月22日付
「19日にリオ入りし、パエス市長と会談した小池知事は「会場をホワイトエレファント(無用の長物)にしないという話に感銘を受けた」と述べた」。そして、「クリーンで透明性の高いクリアな大会にしたい。納税者にホワイトエレファントを残さず、しかし、よいレガシー(遺産)は残す方向で進めたい」と。

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