書き留めたメモをどこで管理するか問題
とは言え、この問題は「作業メモ」に関して難しい問題を含んでいます。一日メモと、作業メモはどこで管理するのか。もし量が少なければ、すべてを一日用のメモに書いてしまえばよいでしょう。そうでない場合は、作業ごとにファイルやノートを作り書き留めていくことになります。
ただし、何かしらの作業中にいったん手を止め、別の作業のファイルを取り出して、そこに書き込むという作業はあまり現実的ではありません。可能ではあるでしょうが、認知スイッチの切り替えにコストがかかりますし、それはつまり面倒でやらなくなる可能性が大、ということです。
そう考えれば、とりあえず手近なところに書き留めておき、その後に処理・分類するのが実際的な運用ではあるでしょう。あるいは、すべてのメモを書き留める単一の媒体を持っておき、そこに何でもかんでもひたすら書き込む方法もあります。
とは言え、そうして雑多に書き込んだものは、後からの利用が難しくなるので、タグ(ラベル)で選り分けることが必要となります。手間を省くための方法を行うために、新しい手間が発生する。本末転倒ではありますが、どうしようもありません。
このようなタグ(ラベル)を使う場合は、一般的にデジタルツールでの運用が想定されますが、アナログツールであっても、記号やマークを使えば、ある程度の選り分けは可能です。また、付箋を一緒に使うことで、「とりあえず一カ所に書き込んでおき、それを後で移動させる」ことも簡易にはできます。
上記のように、メモの扱いは簡単ではありません。「朝に書く一日メモ」に関しては書き場所に悩みませんが、そこに作業メモが入ってくると、混乱が生じ始めます。この点に関しては、もう少し研究が必要でしょう。
とりあえずは、書き込むことを第一目標とし、その後の処理についてはなるべく低コストで行う方法を模索していきましょう。
「作業後のメモ」は何を書く?
では、最後の作業後のメモです。
作業が終わったあとに、作業全体の結果がどうであったのか、次にすべきことは何なのかを書き留めます。いわば、次回の自分への引き継ぎメモです。そうした記述を一つ残してあるだけで、次回の自分の認知経済性は変わってきます。当然のように、こうした作業後のメモを残しているならば、作業の開始はメモの書き込みからではなく、メモの読み返しからとなります。とは言え、どちらにせよメモから始まることは間違いありません。
こうしたメモは、連続ドラマなどの冒頭にある「前回までのあらすじ」に相当すると言ってよいでしょう。そうした記述があれば、多少時間が空いていても、自分がやったこと・やろうとしていたことを思い出せますし、それが作業への取り組み方を変えてくれます。
繰り返しますが、毎日当たり前のように繰り返している作業に対しては、ここまでやる必要はありません。せいぜい作業中に思いついた関係ないことを書き留めるだけで充分です。
しかし、もし間隔が空くような行為、連続性が重要な行為、若干苦手意識を感じているような行為に関しては、まずはメモから始めてみるのがよいでしょう。
(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』より一部抜粋)
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