目に余る習近平の失政。中国が春節移動に禁止令を出せなかった訳

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新型コロナ流行前は実に30億人以上が移動していたという、中国の春節前後の大型連休。今年の春節は2月1日でしたが、北京五輪開幕を控えコロナ感染を抑え込みたい中国政府は、「民族大移動」にどのような規制を加えたのでしょうか。今回の無料メルマガ『出たっきり邦人【アジア編】』では広東省の深センに長く住むMochiさんが、中国当局が人民たちに「出来れば帰らないでください」という弱腰とも言えるトーンで移動の自粛をお願いせざるを得ないウラ事情を紹介。さらに突如降って湧いたコロナ感染者発見のニュースを、「政府の自作自演」と訝らざるを得ない理由を記しています。

『華南の風』中国・深セン【14】春運

皆さんこんにちは。そして新年快楽!今年の旧暦では1/31が大晦日、2/1が春節。一般的な企業は1/30~2/6まで休みとなりますが、工場などは地方から出てきている工員が戻る時間を考慮して10日から14日という長期休みとなります。またこの前後に有休をくっつけて早めに実家に帰る、若しくは遅めに実家から戻る人が多数あり、春節休みの前後1週間はいろんな案件があまり進みません。

春節に実家に帰る民族大移動のことを「春運」と言います。中国では正月を実家で過ごすというのは非常に重要なので飛行機、電車、新幹線、高速バス、自家用車と交通機関が物凄いことになります。過去2年間はコロナで帰れない、帰らない人が多かったので「今年こそ!」と意気込んでいる人ばかりです。

一方でゼロコロナ政策の中国政府としては北京冬季五輪、習近平が異例の国家主席3期目を狙う全人代が控えており、感染者は出来る限り増やしたくないと思っています。春運は数億人が国内を往来するので厄介この上ない。かと言って強硬策を取ることで民衆の不満が高まるのは避けたいというジレンマがあります。ただでさえ21年はたくさんの問題が起きました。

一つは電力不足です。発電のほとんどを石炭による火力発電に頼っている中国が、対中強硬策を取り始めたオーストラリアへの嫌がらせとして、オーストラリアからの石炭を積んだタンカー十数隻の着岸を一時的に拒絶したため、発電量が低下しあちこちで停電が起こりました。電力会社は仕方なく国内から石炭調達を急いだ結果、石炭の高騰を招き、今度は一般人が暖を取る石炭が手に入らないと社会問題に。政府主導で石炭価格を無理矢理下げさせ、何とか軟着陸。

そして「恒大集団」という超大手不動産ディベロッパーのデフォルト危機。この会社は既に半分デフォルト状態ですが、第二、第三の恒大が必死に債務解消に入っているため、あちこちで不動産価格が下落しています。長きに渡って不動産バブルを放置してきたツケですが、これを引き起こしたのも習氏の引き締め政策が引き金。

政府の想定を超えて大きくなり過ぎた団体(芸能人のファンクラブ)やIT関連(個人情報を多数保有)も締め付けた結果、WeChatを運営するTencentも減収減益、ゲーム会社の大量倒産を招きました。これも習氏の嫌がらせが引き金。「ゲームはアヘンみたいなもの」と称し世論を煽りつつ、個人情報の保護が不十分と難癖をつけて罰金を科しました。

そして以前の投稿でもお話しした強制的な学習塾の禁止。子供は救われましたが市場の80%が縮小したことで3,000万人が失業したとされています。有名大学卒業の人気講師が出前の配達ライダーになったニュースも見ました。

【関連】中国政府が少子化に白旗。学習塾の土日営業を禁止にしたウラ事情

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