岸田首相「新しい資本主義」は怪しさ満点。国会答弁で判った日本国宰相の大誤解

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2021年10月4日の発足から、間もなく5ヶ月になろうとする岸田政権。看板政策として「新しい資本主義」を掲げてきましたが、首相自身が経済の基本について思い違いをしている可能性が大きいようです。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、先日行われた国民民主党の前原誠司代表代行と岸田首相との質疑応答の内容を紹介しつつ、両者の認識について「100%誤り」と一刀両断。日本衰退の理由のひとつに「政治家の圧倒的な不勉強」があるとの厳しい見解を示しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年2月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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経済の基本について誤解、新しい資本主義は大丈夫か?

岸田総理の「新しい資本主義」というのは、よく分からないというイメージが定着しています。この点については徹底的にX線解析のような作業を通じて、怪しい部分を明らかにしなくてはならないと思っています。

ちなみにアベノミクスに関しては、何度も繰り返して指摘したように、

  • 円安政策の結果、株価が上がったのは多国籍企業が海外で獲得した収益が円に倒すと誇張して見えるのと、海外で形成される株価が同じく膨張して見えただけ。
  • その結果として、多国籍企業の株価が円では高くなり、それを売った国内投資家や、給料が上がった多国籍企業の社員が消費を増やした分はGDPに寄与。だが、その範囲は限定的。
  • 問題は、多国籍企業がどんどんビジネスを国外流出させているからで、これを止めるには「第三の矢」つまり構造改革が必要だが、安倍政権は結局ヤル気はなかったので大失敗。

という評価を繰り返してきましたし、今もその見解を変えるつもりはありません。

さて、問題の「新しい資本主義」ですが、どうやら相当に怪しさ満点のようです。というのも、2月21日の国会(衆院予算委)で岸田総理は非常に不思議な答弁をしているからです。国民民主(いつの間にかここにいたんですね)の前原誠司議員の質問に答えたもので、企業の利益の分配のあり方について

「資本主義というものは関与するステークホルダーそれぞれに資するものでなければ持続可能なものにならないという観点から考えた場合に、株主還元という形で成長の果実等が流出しているということについてはしっかりと受け止め、この現状について考えていくことは重要であると認識している」

と答えたのだそうです。

意味不明の答弁ですが、これは前原議員の質問を前提としているわけですから、まずは、そっちを紹介することにしましょう。

前原氏は、「資本市場は本来、資金調達の場だったのに資金流出の場になっている」と指摘。グラフを見せながら、資金調達の金額よりも配当と自社株買いによる株主還元がずっと上回っているとして、資本市場が資金調達ではなく、資金流出の場になっていると指摘、更に海外の投資家もいるため「国富が海外に逃げているという認識はございますか」などと語気を強めて迫ったのでした。

こうなると経済の初歩も何もあったものではありません。言ってみれば、カーリングに勝つには最初からハウスの真ん中にどんどんストーンを置いたらいいじゃないかとか、フィギュアスケートはリンク一周のタイムで速度点をつけたほうが面白いとかいうような、暴論というか、メチャクチャな論議です。

まず、配当と自社株買いを混ぜていますが、配当というのは企業が活動して得た利益から、更に法人税を払って残った税引き後の利益を株主に払うものです。そもそも株というのはその配当を期待して買うものですから、配当ができなければ企業の評価は下がり、株は叩き売られてやがて破滅します。

そんな配当するような利益が出るのなら、労働者に賃金を払ったらいいではないかというのが前原氏の主旨かもしれませんが、正に、カーリングでエンドの序盤で一気に中に集めればいいというのと一緒で、利益を出して配当することをやめたら企業の価値は維持できず競争から退場するしかないのです。

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