核戦争は不可避か。プーチン「怒りの炎」に油を注いだ独首相の発言

 

ところで、プーチン大統領のチェックリスト上では、“次”は何を狙っているのでしょうか?

先ほどの友人はそれについては“わからない”とだけ答え、教えてくれなかったので、ここからはある程度、得られている情報を基に、推測するしかないのかもしれません。

一つ目は、あってはならないことですが、【ロシアおよびウクライナ周辺地域でのロシア勢力の拡大】です。

私自身、「え、やっぱりそうなの?」とつぶやいたことですが、日本や欧米諸国では「まさか21世紀にこんなことがあり得るのか?」と驚かれたロシアによるウクライナへの武力侵攻ですが、バルト三国を含むロシアの周辺国にとっては、長らく恐れていたことがついに現実化した瞬間だったということです。

ポーランド政府の高官曰く、「こんな日が来るのを2008年のジョージアへのロシアによる侵攻以降、ずっと覚悟してきた。恐らく、次はバルト三国やモルドバだろう。そしてその後がジョージアやポーランドだろう。すでに多くのNATOの軍がポーランド国内にいるが、果たしてロシアがポーランドに攻め入ってきたとき、どれだけの戦いを、ポーランドのためにしてくれるだろうか?その時、NATO憲章第5条が今でも期待通りに機能するのかどうかが見える」と予測しているようです。

背景にあるのは、欧米諸国が尊重する人権や民主的な体制など、それらの国々の中では当然と捉えられているようなことが、ロシアには通用しないという現実で、ロシアにとっては自国の周辺にNATO軍がいることは、ロシアへの許容しがたい威嚇であり、全力で退けなくてはならないと、心底信じているらしいことです。

1991年に旧ソ連が崩壊してからは、ロシアが実質的な後継者となったのですが、そのロシアを率いるプーチン大統領にも、当時、大統領だったエリツィン大統領にも、旧ソ連諸国を独立国家として存在を許す考えはなく、一日も早く再統合すべきという考えがかたく存在するようです。今回のウクライナ侵攻は見事のその考えが行動に移された典型例だと言えます。

今、ロシア軍の攻撃はドンバス地方(東部)から南東部マリウポリ、そして南部オデーサまで続くロシア勢力圏の回廊地域に集中しており、その勢いは隣国モルドバ共和国にまで及んできています。モルドバ共和国における親ロシア勢力が支配する地域までつながるとき、ドンバスからの陸続きの勢力圏が完成し、ウクライナによる海へのアクセスと、海からのNATO勢力によるアクセスを封じることになります。

さて、そこから西への侵攻については、意欲はあってもかなり困難な企てになるでしょうし、それがプーチン大統領のチェックリストに記載されているかは不明です。

恐らくそれはその時点でロシアがウクライナの国土を包囲できているか否か(西側を除いて)によるかと思われます。

ウクライナを欧米諸国との間に存在する緩衝地帯として確保できていれば、その時点で戦闘を停止し、協議・和平交渉の機が熟したとして、初めて話し合いの席に真剣に向かうのではないかと思います。

ただし、それでもあくまでも“ロシアにとっての条件下に限って(only in Russia’s terms)でしょうが。

では、まことしやかに囁かれ、実際プーチン大統領も言及する【戦術核兵器の使用】についてはどうでしょうか?

先に触れた友人も、ポーランド政府の高官も「核の使用がチェックリスト上にあることはないだろうが、今回の欧米諸国の反応は、ロシアおよびプーチン大統領の恐れを掻き立てていることは確かであり、権威主義と、“ロシアは強国であり、大国である”という意識が根付いているプーチン大統領にとっては、ロシアとその同胞を守るという観点から、追い詰められた際には、使用を厭わない可能性が高い」と懸念を示しています。

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