バイデン訪日後に急変。米国がウクライナ援助を“様子見モード”に替えた裏事情

 

仏独伊については、アメリカがそろりそろりとウクライナ支援団から抜けそうな雰囲気を感じているのでしょう。そして3か国とも、大きな政治日程も無事終わり(フランスは大統領選、ドイツは昨年の総選挙、イタリアはドラギ氏が再選を模索していないゆえのフリーハンド)、【民主主義を守る】【ウクライナと共に】というスローガンでの国民に対する激しいアピールの必要性がなくなったからと言えるでしょう。

そこで意外なのが英国のハードライナーですが、これはジョンソン首相にとって、ウクライナ戦争が終わった暁には、自らの数々のスキャンダル追及が再開し弾劾されることが明白になっていますので、ウクライナでの戦争が長期化し、それに対する不退転の姿勢を示し、ついでに自らも著したチャーチル首相のイメージを彷彿させるアピールを通じて自らの政権維持を目指していると思われます。まあいい迷惑ですが。

そして、自国の安全保障を最優先に考えてNATO加盟申請に踏み切ったスウェーデンとフィンランド、そして欧州の安全保障体制への参画を決断したデンマーク(これまでは、欧州の安全保障体制にはopt-outして不参加)など、大きな政策転換を行った北欧諸国という、別のグループも存在します。

このグループは、あくまでも自衛のための集団安全保障が目的であり、今のところ、対ロシア攻撃やウクライナへの積極的な軍事支援には乗りだしているとは言えません。しかし、スウェーデンは自前で戦闘機を作る能力には定評がある軍事大国ですし、フィンランドにはかつてロシアと戦った記憶と経験、そしてノウハウがあります。

今後の展開次第では、軍事的なバランスを変える切り札になりますが、今のところは自衛・防衛が主目的です(ロシアは良くも悪くも国境を接している隣国で、何とか付き合っていかなくてはならないとの認識)。

そのような中、NATOの結束を崩している最大の勢力は、もちろんトルコです。最近のニュースでは、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟問題への頑なな反対姿勢を通じて、国内外に対して【トルコ・エルドアン大統領ここにあり】という外交アピールを行っています。

スウェーデンとフィンランドの加盟に反対する理由として、クルド人問題を外交交渉のテーブルに乗せることに“成功”し、トルコによるクルド人への攻撃に大変否定的な欧州各国に揺さぶりをかけているようです。

NATOへの新規加盟には加盟国の全会一致が必要とのルールを巧みに利用している戦術ですが、その裏でちゃんと自国の利益追求に走っています。

クルド人問題を机上にのせ、欧州各国の目をそちらに向けている隙に、シリアとトルコの間に設置した緩衝地帯にクルド人武装勢力が潜んでいるという理由付けを行って、再度、越境攻撃を始めました。

以前はロシアからの説得とコミットメントもありましたが、ロシアは今、ウクライナに掛かり切りで、欧州各国もロシア・ウクライナ戦争への対応に追われているため、抗議は受けても、コミットしてこないと読んでいるのか、今回は一気に実行するようです。

こちらがまたさらなる人道的な悲劇を生むことになることに、国際社会はどう対応するのか、非常に懸念をしています。

トルコはさらに欧州内での対ロ方針分離の隙を狙い、ロシアとウクライナの間の和平協議を仲介する意思を示し、イスタンブールでの協議を提案しました。

すでにエルドアン大統領は、プーチン大統領とゼレンスキー大統領と電話会談をしていますが、これまでのところ、どちらからも【ありがたいが、調停に臨むためのベースが全然整っていない】とのことで、今のところこの調停努力は奏功していません。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • バイデン訪日後に急変。米国がウクライナ援助を“様子見モード”に替えた裏事情
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け