小泉悠氏が探る「核シェアリング」を匂わすプーチン大統領の意図

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核を保有する大国が他国を侵略するという現実を目の当たりにし、日本国内でもあがる「核シェアリング」の声。ロシアと協調路線を突き進みNATOの核と対峙するベラルーシのルカシェンコ大統領も死活問題と捉えているのか、プーチン大統領に対し「核シェアリング」を促すような発言をしています。2人の会談を読み解くのは、ロシアの軍事・安全保障政策が専門の軍事評論家・小泉悠さん。今回のメルマガ『小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略』で、双方の発言の要点をわかりやすく整理し、当面「核シェアリング」は、言葉の上に留まるのではないかとの見解をその理由とともに記しています。

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ベラルーシとの「核シェアリング」を匂わせる動き

情勢アップデートをもう一つ。プーチン大統領は6月25日、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、ウクライナ情勢を含めた幅広い問題について話し合った。この際、プーチン大統領が核弾頭を搭載可能なイスカンデル-M弾道ミサイルをベラルーシに供与すると述べたことが話題になったが、実際にロシアがベラルーシと核シェアリングを行う可能性はどれだけあるのだろうか。

そこでこの会談での対話がどのようなものであったのかを確認してみたい。ベラルーシ大統領府のサイトに掲載されている文字起こしによると、ルカシェンコの発言は次の通り。
Переговоры с Президентом России Владимиром Путиным | Официальный интернет-портал Президента Республики Беларусь

  • 米国とNATOの核搭載航空機による飛行訓練を懸念している
  • あなた(プーチン)には「鏡面的な対応」について検討していただくようお願いしたい(つまりロシア空軍機にも同じことをしてほしい)
  • 我々の航空機が核兵器を搭載できるよう援助してほしい
  • ブレストからウラジオストクに至る我らの祖国(ベラルーシとロシアの連合国家を指すのだろうが、もはやルカシェンコはロシアの一地方首長に成り下がったかのようでもある)を守るために、核兵器さえ使う用意がある

一方、プーチンの発言は次の通り。

  • 米国は欧州6カ国に200発の戦術核兵器を貯蔵しており、それらの運用能力を持つ航空機は欧州側も含めて257機である
  • (そのような基地はロシアにはないのか?とのルカシェンコの問いに対して)ロシアにはない
  • 米国の行動に対して「鏡面的対応」を行うことも可能だが、その必要はないだろう
  • ベラルーシ軍にはかなり多数のSu-25攻撃機がある。これらを改装することができる(核弾頭搭載可能とするかどうかは明言せず)。その作業はロシアの航空機工場で行う必要がある
  • 過去の合意に従い、数ヶ月以内にベラルーシにイスカンデル-M作戦・戦術ロケット・コンプレクスを引き渡すことを決定した。知られている通り、このコンプレクスは弾道ミサイルも巡航ミサイルも発射でき、通常弾頭も核弾頭も搭載可能である

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