ホンマでっか池田教授が考察。地震大国・日本のエネルギー戦略とは?

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ロシアが起こした戦争により、にわかに注目されるエネルギー安全保障の問題。前回の記事で、EUとイギリスが主導してきた脱炭素の流れの綻びの発生と「SDGs」の“いかがわしさ”の露呈を指摘したCX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみ、生物学者の池田清彦教授。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、日本のエネルギー戦略について考察。大地震が必ず起こる日本においては原発ゼロを前提とした電源構成を考えるべきで、なおかつ狭い国土には太陽光発電も風力発電も向かないと、忌憚のない意見を述べています。

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エネルギー戦略・日本どうする

前回はウクライナ紛争後のEUのエネルギー戦略について話したが、今回は日本のエネルギー戦略について、思う所を述べてみたい。岸田首相は、原発を最大9基、火力発電所を10基稼働させて、この冬の電力供給を確保したいと述べたが、原発はEU諸国などの地盤が安定している場所ならばともかく、日本ではリスクが大きすぎて賛成できない。

ヨーロッパはほぼユーラシアプレートの中に位置し、イタリアとアイスランドを除いて地震はほとんどない。イタリアはユーラシアプレートとアフリカプレートの間に位置し、アイスランドはユーラシアプレートと北アフリカプレートの境にあって、地震大国かつ火山大国である。

そのせいで、イタリアは1987年のチェルノブイリ事故を受けて原発の運転を停止して、その後原発を動かしていない。電源構成比は化石燃料が60%、水力が17%、その他の再生可能エネルギーが23%である(2018年)。再生可能エネルギーの内訳は太陽光8%、風力6%、地熱2%、バイオマス等7%であり、火山大国にしては地熱の割合は多くない。

一方、アイスランドでは電源はすべて再生可能エネルギーで、地熱が20~30%、残りは水力である。地熱は、電力ばかりではなく家庭用の暖房や給湯にも使われており、暖房費は石油を使う場合の4分の1だという。人口が37万人とごく僅かだということもあるが、自然の恵みを上手に使っていることは確かだ。

日本に地震が多い理由は地質学的にはっきりしている。日本列島に沿ってプレートの境目が縦横に走っているからだ。東方の太平洋プレートと西方のユーラシアプレートの間に、北方から北アメリカプレート、南方からフィリピン海プレートが入り込み、いたるところが地震の巣なのだ。

例えば、2011年の東日本大地震は太平洋プレートと北アメリカプレートの境目に当たる、三陸沖の太平洋で起きたし、2030年~2040年に、まず間違いなく起こると考えられている南海トラフ地震は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境目に当たる紀伊半島沖から四国沖で発生すると予想されている。

福島第一原発の事故はまだ終息のめどさえ立っていないのに、さらに何基も原発を動かそうというのは、正気の沙汰とは思えない。一度、大事故を起こした時の悲惨さは、他の発電施設の比ではない。確かに、短期的には発電単価は安く、コストパフォーマンスは高いだろう。しかし、それは、自動車を運転するのに自賠責保険をかけない方が安上がりだというのと同じだ。事故が起きれば、トータルの発電単価は天文学的な数字になる。

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