核リサイクル計画と同じ。捕鯨を辞められない日本が抱える大問題

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今やほとんどの日本人が、日常生活で口にすることがなくなった鯨肉。それでも日本政府は調査という名目で鯨を獲り続け、2019年には商業捕鯨を31年ぶりに再開させました。なぜ我が国は、国際社会から非難を浴びながらも捕鯨を辞めないのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、核のリサイクル計画と同様、典型的な「一度始めたことを辞められない」状況に陥っていると指摘。さらに痛みを伴う中止決定に及び腰の自民党を批判するとともに、責任の一端は彼らを選挙で勝たせる日本国民にもあるとしています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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一度始めたことを辞められない日本

NHKスペシャル『鯨獲りの海』を観ました。

3年前から、再開されている日本の商業捕鯨。今回私たちは、再開後はじめて、日本唯一の捕鯨船団の長期航海に密着を許された。古来から続く捕鯨。ある人は『残酷』だといい、ある人は『文化』だという。価値観が多様化する現代。なぜ鯨を獲り続けるのか。そして、そこに、何があるのか。知られざる鯨獲りの記録だ。

最近、ハワイで鯨に親しんでいる身としては、目を背けたくなるような場面も数多くありましたが、我慢して最後まで観ました。

色々と思うことはありましたが、作り手の意図がはっきりと伝わって来る、力強い映像でした。

「日本独自の文化を守る」というお題目の元に、大多数の国の反対を押し切り、IWCから脱退してまで続けている捕鯨は、本当に今の時代に必要なのか、一体何のために続けられているのかを問う、とてもメッセージ性の強い番組です。

昔のNHKスペシャルはもっと直接的に政府の批判をすることもありましたが、安倍政権時代に強められた報道規制により、表向きは政府の批判が出来なくなる中、あえて批判はせず、残酷な場面を含む捕鯨の現場だけを淡々と捉えた映像を流すことにより、視聴者の判断を仰ぐ姿勢は、同じく事実だけを描くことにより読む人の心の中に深く訴えかける「叙事詩」と同じ効果を持つ、素晴らしい作品だと思います。

この番組では一切触れられていませんが、「鯨肉ビジネス」は既に成り立たなくなっています。鯨肉が日本人の貴重なタンパク源だった時代は終わり、鯨肉の需要は下がる一方です(参考:「クジラを食べたかったネコ」)。

「鯨肉ビジネス」は、既に税金による補填がなければ成り立たないビジネスですが、需要を度外しして捕鯨を続けているため、流通在庫は増え続けています。そのため、さらに税金を投じて、鯨肉のプロモーションを行ったり、学校給食に使うなどの施策が採用されています(水銀含有量の多い鯨肉を成長期の子供達が接種することはとても危険です)。

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