過激な脱原発と脱石炭のツケ。ガス不足で国民凍死危機に瀕する国

 

そもそも、本当に脱炭素を目指すなら、極端に走らず、最良のエネルギーミックスを模索すべきだろう。エネルギーの安定確保が見込めない今、CO2を出さない原発を排除することは、CO2削減という意味でも賢明ではない。だからこそ、「脱原発とCO2削減の両立」というドイツの見果てぬ夢に追随する産業国はどこにもなかったのだ。

ところが、なぜか唯一、日本だけがドイツと結構似たような道を歩んでいる。国益を度外視し、どう見ても採算の取れそうにない技術に莫大な補助金を付け、世界一高いエネルギーコストを強いられ、さらに今では電力不足という致命傷まで負っている。

日本はそろそろエネルギー問題とCO2問題を混同することをやめ、エネルギー供給と国家経済の安定、ひいては安全保障の充実に重点を置くよう方向転換すべきではないか。そうすれば、環境問題や途上国の開発援助にも、真の意味で貢献できるようになる。そのためには、今、ドイツで進行している出来事をしかと認識することが大切だと思う。

追記:ハーベック経済・気候保護相は9月30日、残っている原発3基のうちの2基の、4月半ばまでの稼働延長を発表した。

プロフィール:川口 マーン 惠美
作家。日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ドイツ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。ベストセラーになった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)をはじめ主な著書に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)、『復興の日本人論』(グッドブックス)、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)がある。

image by : M. Volk / Shutterstock.com

川口 マーン 惠美

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