11月10日、経済産業省が旗振り役となり、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、デンソー、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が出資する次世代半導体の新会社「Rapidus(ラピダス)」が設立されました。国が主導する半導体会社と言えば過去に失敗を重ねていて、ラピダスに関しても評判は芳しくありません。そこで、今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、ラピダス成功ために、AI投資で大きな損失を出したソフトバンクの孫正義氏に働きかけ、armの最先端の技術を取り込む私案を披露しています。
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日の丸半導体会社「ラピダス」が孫社長を救えばいい──売り先がなく困っているarmと一緒にするのが吉
次世代半導体の新会社「ラピダス」が話題だ。メディアでは「失敗するに決まっている」「経産省主導でうまくいくわけがない」と早くも非難轟々だ。確かに今からTSMCやサムスン電子と戦うにはあまりに遅すぎる感は否めない。
日本政府がラピダスを立ち上げる背景には安全保障の問題も大きい。中国情勢によって、台湾に半導体を依存するのはあまりに不安だ。そこで日本でも半導体を製造できるような環境を整備するというのは理解できる。ただ、現状、半導体ビジネスは中国市場なくしては回らない。
先週、ハワイ・マウイ島で「SnapdragonSummit」が開催されたが、基調講演は午後1時からと中国市場でオンライン視聴しやすい時間帯が設定されていた。
今週、東京・五反田でメディアテックの記者説明会が開催されたが、フラグシップスマートフォン向けチップで、メディアテックのシェアが大幅に伸びている点がアピールされた。メディアテックといえばエントリーやミドルクラス向けというイメージが強いが、着々とフラグシップ向けにもシェアを拡大しているのだ。
中国メーカーには、OPPOやシャオミ、Vitoといった世界的に販売台数を稼ぐメーカーが多い。自社でチップを手がけるアップルやサムスン電子以外に、チップを買ってもらうには中国メーカーへの販売は避けて通れないのだ。
ラピダスはスマートフォンをターゲットとした半導体の大量生産モデルとは一線を画し、専用の半導体を多品種少量生産するビジネスモデルを目指すようだが、やはり中国メーカーとの取引は避けられないのではないだろうか。
ラピダスはIBMからの技術協力を仰ぐようだが、いっそのこと、ラピダスは孫正義氏からarmを買い叩けばいい。armと協力関係になれば、ラピダスは世界最先端の技術を手に入れることができる。一方、AI投資に失敗し、意気消沈の孫社長は、armの企業価値向上に全力を注いでいるようだが、ラピダスがarmを買い取ってくれれば、ソフトバンクグループも一気に状況が改善するはずだ。
あれほどチップに対して情熱を注いでいる孫社長なのだから、armとともにラピダスの舵取りをしてくれればいい。アップルやグーグル、マイクロソフト、フォックスコンなど名だたる企業に顔が効く孫社長が営業していけば、ラピダスの半導体は一気に世界で普及する気がしている。armと孫社長とラピダスの組み合わせが日本の半導体ビジネスの救世主になるのではないか。
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