単なる「客寄せパンダ」か?報じられぬゼレンスキー“電撃訪米”のウラ事情

 

欧州各国が口は出してもなかなか支援してくれない中、単独で全体の4割から5割に上る支援を軍事的にも経済的にも行っているアメリカにいくことで、アメリカでも高まるウクライナ支援疲れを反転させたかったという理由はあるでしょうが、恐らくは「支援継続のためには、自身でワシントンに来てもらい、財布のひもを握る議会下院に直接訴えかけてもらわないといけない」というバイデン政権からの要請が大きかったのではないかと思われます。

追加の支援、そして高性能の武器が喉から手が出るほど欲しいゼレンスキー大統領の足元を見たとまではいいませんが、来年の議会で下院の多数派が共和党になる前に、ウクライナ支援を含む軍事予算を成立させなくてはならないという、バイデン政権側の理由も大きく、意地の悪い言い方かもしれませんが、ゼレンスキー大統領を政治的な客寄せパンダに使ったようにも思われます。

実際に誘われるがままにワシントンを訪問し、議会での演説を行ったゼレンスキー大統領でしたが、戦争継続中のリーダーが現場を離れるというリスクを冒すだけの価値あるものをお土産として持って帰ることができるのでしょうか?

ゼレンスキー大統領はロシアがウクライナに侵攻してからずっと、ウクライナに留まり、暗殺の危険を覚悟でウクライナ国民と軍、そして国際社会に訴えかけてきましたが、この“ウクライナを離れた”という現実が、ロシアの侵略に対するウクライナ国民が一致団結して戦うというモチベーションに変なハレーションを起こさないことを切に願います。

ゼレンスキー大統領の訪米のみならず、時を同じくしてプーチン大統領がベラルーシを訪問し、また航続距離が1万8,000キロメートルにも及ぶ(つまり南半球経由でもアメリカ全土が射程圏内)ICBMサルマートを実戦配備することを発表するなど、いろいろと起きた今週でしたが、今週の動きがすぐに何か具体的な行動に繋がりそうかと言われれば、そうではないと思います。

キーウ再攻撃のためにベラルーシ経由での攻撃を計画しているという情報もありますが、現在、遂行されているレベルの攻撃ではすでに地上兵力を投入して軍同士をターゲットにするという戦い方ではなく、すでにその次のレベルの「市民生活の破壊とインフラの破壊」に進んでいますので、恐らくこれは、ロシア側が作り始めた戦後の勢力確保・拡大のための策の一環ではないかと思います。

それを挫くためにはパトリオットミサイルをはじめとする精巧な迎撃ミサイルシステムは重要ですが、防衛“システム”と呼ばれるように、それなりの規模をもって“網”を張る必要が出てきますので、発表されている規模でどこまで対応できるかは不透明です。

今回のウクライナの抗戦の効果を左右するのは、安定した補給の確保だと考えますが(ゆえにロシアはここを叩きに来ているのでしょうが)、その際、そのカギを握っているのは“だれ”でしょうか?

物資や軍備を提供するアメリカや欧州各国はもちろん重要ですし、ウクライナからの穀物輸出を仲介するトルコも別の観点から重要な立ち位置です。

しかし、あえて最も重要なカギを握っている国を挙げるとしたら、私はウクライナの隣国でNATO最東端に位置するポーランドではないかと思います。

それはなぜか?

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