単なる「客寄せパンダ」か?報じられぬゼレンスキー“電撃訪米”のウラ事情

 

第一に【日に1,000万トン程度必要とされるウクライナへの物資の流通・補給の9割がポーランド経由である】という状況です。

ゆえにロシア軍は今、補給路を断つべく、国境地域でポーランド系ウクライナ人が多いリビウ周辺に攻撃を加えています。国境越えを行う道路を寸断し、鉄道網に打撃を与えることで補給路を閉ざす作戦ですが、このロシアの作戦に対して今、ポーランドは目立った動きを見せていません。

ウクライナ国内が現在深刻な問題に陥っているのは、ロシア軍による攻撃で破壊されたインフラを修理する物資が決定的に足りないという理由がありますが、ポーランド側には物資も人手(ウクライナからの避難民含む)が十分にあり、専門家によると、リビウ周辺ぐらいであれば十分に対応可能ということです。

ではどうしてポーランドは動かないのか?

一説には先日“第3次世界大戦のイブ”とも恐れられたポーランドへのミサイルの着弾に対する謝罪がウクライナからないことへの怒りがあるとの話もあるのですが、実際にはウクライナへの警戒心とロシアへの恐怖、そしてNATOから押し寄せる様々なプレッシャー、ウクライナからの避難民受け入れで生じた国内情勢の不安定化など、いろいろな理由があるようです。

一言でいえば、あまり積極的にウクライナ情勢に絡みたくないという状況と推察します。

国内的には大統領と首相の方針がずれているようで、バランスを取ってポーランドを守りに入る大統領ドゥダ氏と、欧米からの要請を受け入れてNATOやEU内での立場を有利にしたいとの思いからウクライナに肩入れしたいモラヴィエツキー首相のそりが合わないと伝えられています。このリーダーシップレベルでのずれが生んだ典型的な動きが、ポーランドが一度約束した戦闘機のウクライナへの直接供与が取り消されたことです(あとは、プーチン大統領が繰り返す核兵器使用の脅しでしょうか)。

その背景にはドゥダ大統領のバランス感覚があり、さまざまなメディアの情報や英情報機関からの情報とは違い、ロシアは実際にポーランドに戦火を拡げることに関心がなく、スタン系の国々とは違い、ウクライナ国境を越えてくるつもりはないと考えているらしいと言われています。

ゆえに、ロシアによる侵略行為は許せないとの前提は変わらないものの、ロシアをあまり不要に刺激してポーランドに火の粉がかかるのを見たくないという意図が見えます。

それに加えて表面化してきているウクライナからの避難民とポーランド人(ワルシャワやドイツよりのPoznanなどの住人)との間で表面化しつつあるいざこざへの対応を優先しなくてはならないことが挙げられます。

ポーランドのdemographyを見てみた場合、ドイツに近い側はどちらかというとベルリン、パリ、ロンドンを意識している半面、ウクライナ国境に近い側のポーランドは、どちらかというとロシア・ウクライナ側、つまり東側を見ています。

そうなる理由は、ポーランドが辿った歴史的な経験があると思われます。第2次世界大戦時、ナチスドイツがロシアに遠征した際に蹂躙され、ナチスドイツがロシアに追い払われた際にはロシアに蹂躙されるという、双方向から侵略された経験を指します。

そこにかつてはポーランドも帝国として、現在のウクライナを支配し、ハンガリー、ブルガリアなども支配下に置いていたという過去があり、今でもそれがウクライナや周辺諸国に対する根本的な感情に繋がっていると言われています。

そしてそれゆえか、あまり認めたがりませんが、ポーランドのリーダーたちの対ウクライナ観は、ロシアのそれと似ており、ウクライナを国家とは本気で見なしていない雰囲気があります。

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