単なる「客寄せパンダ」か?報じられぬゼレンスキー“電撃訪米”のウラ事情

 

ロシアがウクライナに一斉侵攻した際にはNATOの一員として、そしてNATO内で最もロシアに近い国として、ロシアの行動に対して対抗する構えを見せていましたが、事態が長期化するとともに、ドゥダ大統領周辺は少し冷静な判断をするようになったようで、NATOに基地使用は認めても、ポーランド軍が直接的に戦争に加わることはしないという姿勢を固めたようです。

それと並行してプーチン大統領が繰り返す核兵器使用の脅しは、実際の使用というよりは、ポーランドに対して「動くなよ」というメッセージだと受け取られています。

そのため、ポーランドは今、“動いて”いません。

今後、良くも悪くも戦況に大きな変化・動きが出るとしたら、ロシアによる核兵器使用というextremeか、ポーランドが人種的には同じと言っていいウクライナ西部を取りに行くケースが起こった場合だと考えています。

皆さんもご存じの通り、ウクライナは大きく分けて3分割できます。1つはドンバス地方に代表されるロシア系が多いロシア正教会系の地域(ノヴォロシアー新ロシア。ここはロシア正教会)、2つ目はキーウからドニエプル川あたりまでをカバーする小ロシア(ウクライナ正教会)、そして3つ目がポーランド国境に近いリビウ周辺を指す西部(カトリック系のガリツィア地方)という分類ですが、ロシアとウクライナを含む多国籍の分析官の意見をまとめると、プーチン大統領とロシアの3つ目の西部の支配にはさほど関心がないようです。

ゆえにもしポーランドがガリツィアを獲得する代わりにロシアに協力するとでも言いだすような事態になれば、戦況は大きく変わってしまいます。

これを匂わすような発言があったのは、プーチン大統領が言った「ウクライナがEUに加盟することは全然かまわない。NATO入りは絶対に許さない」という内容です。

深読みしすぎかもしれませんが、ロシアと関わりを持とうとしたり、親近感を全く感じたりしないウクライナ西部(ガリツィア)がEUに入ることになれば、EUが復興の面倒を見なくてはいけないことになり、戦争の後、ドイツとフランスがお金や人を出して面倒を見る必要が出てきます。そこでポーランドは、Brexit後、すでにEU第3のパワーになっていますが、物理的にウクライナ人とガリツィアを引き受けることで、富めるEU西欧国からの支援も引き出せるというわけです。ポーランドにとっても大いにうまみがあるように思いませんか?

もしロシアもポーランドもお互いは嫌いでも、実利を追求して相互不可侵の約束をし、ガリツィアをポーランド、残りはロシアというような線引きを水面下で行うような事態になれば、ウクライナという国家は消滅し、新しい地政学的なリスクがユーラシアに誕生することになります。

「それはあなたの行き過ぎた妄想でしょう?」と批判されるかもしれませんが、いろいろな情報をもとに考えてみると、あながち妄想とも言えないような気がしています。

それは、ゼレンスキー大統領がアメリカ議会でも発言したように、ロシアはまだまだ戦争を継続することが出来るだけの武器弾薬を持っていますし、ポーランドは戦略的沈黙を続け、うまい具合に気配を消しています。

その背後では、すでにウクライナ国内のインフラを徹底的に破壊するという市民生活と生命の破壊という戦争戦略の第2幕から、「リーダーシップの排除」という第3段階にロシアの作戦が移ってきていると思われます。

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