高等教育への財政支出は先進国最低レベル
なぜ日本の大学進学率が低いか、その要因の一つとして国が高等教育費をケチっているということがあります。下は、高等教育費(義務教育以上の教育費)に国や自治体がどれだけ費用の負担をしているのかの割合です。
OECD諸国の高等教育費の財政負担率(33カ国中)
1位 ノルウェー 96%
2位 オーストリア 94%
3位 フィンランド 93%
4位 ルクセンブルグ 92%
5位 アイスランド 89%
24位 イタリア 62%
27位 カナダ 49%
29位 韓国 36%
30位 アメリカ 35%
32位 日本 32%(ワースト2位)
33位 イギリス 25%
OECD平均 66%
(出典 図表でみる教育OECDインディケータ(2018年度版))
これを見ると日本はOECDの中でワースト2位であり、高等教育費の32%しか財政による支出はされていないのです。OECDの平均が66%なので、なんと半分以下です。
イギリスやアメリカもかなり少ないですが、欧米の場合は、寄付の文化があり、大学などの高等教育機関に寄せられる寄付金も多いのです。しかも、キリスト教など宗教団体が、大学などを運営しているケースも非常に多くなっています。そのため高等教育費の家計による支出というのは、かなり抑えられているのです。
日本の場合は、寄付の文化もなく、宗教団体運営の大学なども少ないので、国が負担しなければそれはすぐざま家計による支出の増大に結びつきます。日本が大学進学率が低いことを前述しましたが、その要因の一つにこの公的負担の少なさが挙げられるのです。
高等教育への公的負担の少なさは、日本の大学教育に大きな影響を与えています。というのも近年、日本の大学の授業料は高騰しているのです。国立大学の授業料は、昭和50年には年間3万6千円でした。
しかし、平成元年には33万9600円となり、平成17年からは53万5800円にまで高騰しています。40年の間に、12倍に膨れ上がったのです。バブル期の大学生と比較しても、現在は約2倍です。この授業料の高騰のため、大学に行けない若者が激増しているのです。
また大学に行くために、多額の借金をする若者も増えています。現在、50万人以上の大学生が「有利子の奨学金」を受けて大学に通っているのです。
この「有利子の奨学金」というのは、奨学金とは名ばかりで、実際はローンと変わりません。厳しい返済の義務があり、もし返済を怠れば、法的処置さえ講じられます。
この「有利子の奨学金」を受けている50万人以上という数字は、大学生全体の約の5分の1です。彼らは大学卒業時には、数百万円の借金を抱えていることになります。
この記事の著者・大村大次郎さんのメルマガ
image by:Wiennat M/Shutterstock.com