物価高騰で苦労する従業員に「物価手当」や「インフレ手当」を支給する会社が増えているようです。従業員にとってありがたい手当ですが、支給対象が正社員だけだとしたら問題にならないのでしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが、従業員20名のうち有期雇用労働者3名には手当が支給されなかった事例を紹介し、「同一労働同一賃金」の点から大いに問題があると解説しています。
物価手当やインフレ手当の支給はすべきなのか?
最近の物価高騰に対して、“物価手当”や“インフレ手当”等の支給を考えている会社も多いと思います。これは、従業員の生活を考えての支給でしょうし、従業員にとって喜ばしいことと思います。しかし、このような支給でも、従業員とトラブルになることがあります。
わたしが労働者から受けたご相談を紹介します。こちらの会社は従業員が20名程の会社です。そのうち3名が、1年ごとの有期雇用契約で働いています。相談者は、この3名の中のひとりです。この3名を除く残りの従業員は全員が正社員です。
この会社で、物価高騰に対する“物価手当”を当面の間、毎月支給することになりました。しかし、支給されるのは正社員だけであり、有期雇用労働者の3名は支給対象外とされました。
ここでまず問題になるのが、“同一労働同一賃金”の問題です。正社員と有期雇用労働者との間で“不合理な待遇差”を設けてはならないことになっています。
今回の手当については、物価高騰による生活費への補填という意味合いが大きいでしょう。そうであれば、正社員・有期雇用労働者にかかわりなく物価高騰による影響を受けることに変わりはありませんから、有期雇用労働者にだけ支給しないというのは“不合理な待遇差”と判断されかねません。
また、有期雇用労働者にしてみれば、正社員と差別され、正社員よりも下に扱われた・ぞんざいに扱われたと感じ、プライドが傷付けられ、仕事へのやる気や会社への忠誠心が削がれることになります。ちなみに、こちらの会社では、正社員と有期雇用労働者で、仕事内容に大きな違いはありません。
ご相談にいらした労働者も言っていました。「正社員と金額に差があるのは仕方がないとして、全く支給されないというのは納得いかない」と。
せっかく良かれと思って支給した物価手当が、正社員と有期雇用労働者との軋轢を生み、会社と有期雇用労働者の間にしこりを残すことになりました。
今回ご紹介したのは1つの事例でしかありませんが、御社でも物価手当等の支給を考えているのであれば、この事例を参考にして頂けたらと思います。
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