あらゆる商品には、様々な訴求ポイントがあります。
まず「技術」です。新しい技術によって、新しい商品が生み出され、新しい市場が生れます。
次に「品質」です。同じ技術の商品でも、素材や部品、仕様によって、品質が安定し、丈夫になり、長持ちするようになります。
次に、「デザイン」です。性能や品質が同じなら、次に心理的な性能が問われます。美しい、カッコイイという価値を訴求します。
「技術」「品質」等の物理的性能が変わらず、「デザイン」だけで勝負するようになると、デザインは細分化していきます。顧客を細分化し、更には、時代性、トレンド性が重要視されるようになり、ファッション化するのです。
ファッションとは、成熟の果てに生れた変化なのかもしれません。定期的な変化を定期的なコレクションで発表し、それを評価する評論家が存在し、それを伝えるメディアも存在する。それをシステム化したものがファッションシステムです。
ですから、成熟した商品はファッション化することで新たな魅力を訴求することが可能になります。
例えば、軽自動車がファッション化すると魅力が増すのではないでしょうか。各軽自動車メーカーが連携して一定期間の中で新デザインのコレクションを発表する。
基本的性能は変わらなくても、外装と内装だけの変化でも可とします。自動車メーカーだけでなく、塗装やラッピング、内装、カーシートの企業もコレクションに参加できます。
このコンセプトはEVにも応用できます。小型EVをファッション商品として販売すれば、新たな市場が生れるでしょう。基本的なシャーシーは共通にして、ボディのバリエーションを作り、コレクションとして発表する。
このようにファッション化という視点は、イノベーションにもつながっていくと思うのです。
編集後記「締めの都々逸」
「近くのものは ぼやけていても 遠くのものは 良く見える」
近くは見えなくても遠くは見える。これは老眼ビジョンと呼ぶべきだろうか。
歳を取ると、昔のことばかり思い出しますね。最近のことは忘れちゃう。これは老脳でしょうか。もしかすると、歴史を振り返って、未来を考えるのは、高齢者が適しているのかもしれません。
現役世代はどうしても目先の利益にとらわれます。自社の利益にもとらわれますね。組織から抜けると、世の中全体の動きが見えるようになります。これも老人力の一つでしょうか。(坂口昌章)
この記事の著者・坂口昌章さんのメルマガ
image by: Shutterstock,com