製造できても収益は生めず?官製半導体メーカー「ラピダス」の大きな課題

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経済産業省が旗振り役となり、日本の名だたる企業8社の出資で昨年11月に設立された次世代半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」。2nm世代プロセス半導体を2027年までに量産する計画ですが、目指すゴールがそこになってはいないかと疑問を呈するのは、Windows95を設計した日本人として知られる世界的エンジニアの中島聡さん。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、日経クロステックに掲載された半導体専門のアナリストによる的確な分析を補足しながら、最も大きな課題と本当に目指すべきゴールがどこにあるかをシビアに指摘しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事:日本の主要企業8社の支援を受けて設立された半導体メーカー「ラピダス」が抱える問題

台湾アナリストが分析するラピダス、「製造できるが採算合わない」 | 日経クロステック

事業として立ち上がるまで数兆円が必要と呼ばれるラピダスに関して、私はここまで「(日本政府が資金を提供し、関係会社からサラリーマンたちが天下りしてくる、という)座組み」の面での懸念を表明して来ましたが、この記事は、半導体専門のアナリスト目線で、ラピダスが抱える課題を的確にしているという興味深い記事です。

要約すると、
● 2027年までに2nm世代プロセス半導体を量産するという計画は、技術的には達成可能だが、歩留まりや生産性を高めて収益性のあるビジネスにするのは困難
● 理由は、経験不足、資金不足、顧客の不在

特に心配なのは、資金です。日本政府はラピダスに700億円を拠出すると発表しましたが、業界トップのTSMCの投資額は、年間4兆円を超えており、量産化に必要とされる資金は数兆円と言われています。巨額の財政赤字を抱え、加速する少子高齢化でますます悪化する国家の財政を考えると、2027年まで日本政府が資金を提供し続けられるとは限りません。

たとえ日本政府の資金援助が2027年まで続いたとしても、資金を提供する日本政府も、ラピダス関係者も、「2027年までに2nm世代プロセス半導体を量産する」ことだけをゴールにしているように見えるのが何よりも心配です。

今の段階から「量産体制を作った後、収益が上がる事業にするには、さらにどのくらいの年月と資金が必要なのか」という議論をしっかりとしておき、「収益が上がる事業にする」ことをゴールにしない限り、「(税金を数兆円投入して)2nm世代プロセス半導体の量産化を達成したのに、赤字の垂れ流しで、事業を継続できない」という最悪の事態にもなりかねません。

(『週刊 Life is beautiful』2023年2月28日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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