自民にすり寄る立憲民主の惨状。呆れた「日米同盟が基軸」というおべんちゃら

 

口が裂けても言うべきではない「日米同盟が基軸」の妄言

冷戦時代の保革対立の時代には〔右≒保守≒自民党〕vs.〔左=革新=社共両党〕という図式で、それでは何の問題も解決できない行き詰まりの結果として「55年体制」が崩壊した。そこで新たに立てられるべきは、保革でも左右でもなく〔保守≒自民党〕vs.〔リベラル=旧民主党〕の新しい座標軸でなければならなかった。そしてそれを鮮やかに示すためには、〔親安保=対米従属〕に対抗するのが〔反安保=対米決別〕ではなくて、〔疑安保=対米毅然〕という立ち位置の設定が必要だった。

そういう旧民主党の成り立ちからすれば、その〔一応は〕後継とされている今日の立憲民主党は、基本的に平和主義の側に立って武力主義と戦うのであって、口が裂けても「日米同盟が基軸」などと言うべきではない。

このような立憲民主党の腰抜けぶりに比べると、河野洋平が『サンデー毎日』4月2日号で語っているのは遥かにリベラル的である。もちろん彼の基本は「日米基軸」であるが、しかし対米盲従に陥ることの愚をきちんと指摘している。

(3-1)日米基軸は守ってきた。だがトランプ政権になって、果たして米国の民主主義は大丈夫か、という疑問がでてきた。メディアを敵視、批判されるとフェイクニュース呼ばわりする。差別を助長、分断を煽る。人事権を乱用し、権力を監視するチェック・アンド・バランスの仕組みをないがしろにする。軸と思っていた米国がこんなにグラグラしてしまい、この軸にぶら下がっていると、逆に振り回されどうにもならない面も出てきた。日本はますますもって米国にきちんと言うべきことを言わなければならなくなってきた。

(3-2)その頼りなくなった米国は、安全保障面で世界の警察官的役回りをせず、ある意味、中国の台頭にすっかり怯えてしまっている。自分を脅かす奴は許さん、叩いてしまえ、という雰囲気になっている。政治だけでなく米国民全体が怯えている、と僕には見える。

河野の言う通りで、その「怯え」の根源は、私の説では、米国が「何でも世界で一番」という立場から滑り落ちつつあることへの恐怖感であり、その裏返しで中国など台頭してくる者に対しては悪罵の限りを尽くすというヒステリー症状に陥っている。それはトランプ政権に限ったことではなく、バイデン政権になっても同じで、世界を「民主主義国vs.専制主義国」に二分し自分をその一方の旗頭とすることで居場所を確保しようとする稚拙な自己暗示に溺れている。しかも滑稽なことに、河野が言うように世界は「果たして米国の民主主義は大丈夫か」と疑っており、さらに米国内でさえも外交問題評議会のリチャード・ハース会長のように「民主主義サミットは悪いアイデアだ。米国の民主主義は他の国のモデルとは言いがたい」という冷静な見方が出ているのである。

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