衆参補選で全敗。自民党を“救った”立憲民主党の「戦略的だらしなさ」

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4月23日に投開票が行われた衆参両院の5つの補欠選挙で、「4勝1敗」の結果を出した自民党。しかしながら翌日記者団の前に現れた岸田首相は「叱咤激励をいただいた」などと語り、硬い表情を崩すことはありませんでした。その理由を考察しているのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、岸田首相が「呵々大笑」とはいかなかった原因を「いずれの勝ちも中身がよくなかった」として、5つの補選全てについて詳しく解説するとともに、今回の選挙で露呈した立憲民主党の戦略的だらしなさに、批判的な目を向けています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年4月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

露呈した立憲民主の戦略的だらしなさ。衆参補選で自民に「4勝1敗」許す体たらく

4月23日投開票の衆参5補選について、岸田文雄首相が早くから示していた目標ラインは「3勝2敗」で、それに照らせば「4勝1敗」の結果は上出来のはずだが、彼の表情は呵呵大笑からはほど遠いものだった。理由はハッキリしていて、1つの負けはもちろん4つの勝ちも自民党にとって「中身がよくない」ことにある。

ここでギアを入れ替えて支持率を上向きに保ちつつ、5月19日から3日間、地元=広島で開かれる「G7サミット」を精一杯に劇場化し、その勢いで6月21日会期末に解散・総選挙を打って政権基礎を盤石のものとする――という彼が描いていた最善シナリオは、潰えてはいないが、そこへ一気に突き進むのは躊躇われるような一時留保状態に置かれたと見るべきだろう。

衆院和歌山1区は、自民・公明が推す門博文=元衆議院議員が6,063票差で維新新人の林佑美=元和歌山市議に敗れた。自民党は当初、和歌山選挙区選出で二階派の鶴保庸介=参院議員を鞍替えさせる方向だったが、同じく和歌山で衆院への鞍替えを狙っている安倍派の世耕弘成=参院幹事長が「先を越される」のを嫌って異議を唱え、県連会長代行の立場にありながら組織を引っ掻き回し、門を強引に候補者にした。

門はこれまで1区で、民主党衆院議員から現在は知事に転じた岸本周平に4回続けて敗北し、前回は比例復活もならなかった候補。おまけに2015年には同僚女性議員と六本木で路上キスをしている写真を週刊誌に載せられて謝罪するなど、ハッキリ言って玉が悪い。そのため、地元が一本にまとまり切らないまま選挙戦に突入し、その乱れを維新に突かれた格好になった。

鶴保は超党派の「大阪・関西万博を成功させる国会議員連盟」(会長=二階)の事務局長で、もし彼が立候補すれば維新は対立候補を立てなかったろうと言われていた。世耕の我儘が元で議席をむざむざ失ったことになる。

前半戦の奈良県知事選で、県連会長の高市早苗=経済安保相が、5選を目指す現職知事の意向を無視して自分の子飼いの元官僚を立て、保守分裂状況を生み、そこをやはり維新につけ込まれたのと似た構図で、つまり自民党の重鎮や閣僚級が自分の地元を取り仕切って組織をまとめる力量を欠いていることを示している。

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