アメリカのブリンケン国務長官がバイデン政権として初めて北京を訪問し、19日には習近平国家主席との会談も実現。米中関係が改善するのか気になるところですが、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授は懐疑的です。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、ブリンケン氏の北京訪問直前に大統領補佐官がインドを訪問し「中国への懸念」について話し合うなど、米国の「言行不一致」が続いていると指摘。20日には早速、バイデン大統領が習近平氏を「独裁者」と呼び、中国が猛反発する事態を予期していたかのように、米中関係を分析しています。
ブリンケン訪中でも「良質な競争」への道は遠いと考えられるいくつかの理由
競争が紛争に陥らないようにする。
6月18日午前7時ごろ、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が北京国際空港に降り立った。この原稿を書いている段階では、まだ具体的な訪問の成果は伝わってきていない。しかし今回の訪問は、様々な意味でサプライズが予測しにくい動きだったといえるかもしれない。
冒頭の一文はブリンケン訪中が発表された6月14日、米ホワイトハウスや国務省高官らが口をそろえた訪問の目的だ。ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカート・キャンベル・インド太平洋調整官、カリーヌ・ジャンピエール報道官。そして国務省のダニエル・クリテンブリンク東アジア太平洋次官補とマシュー・ミラー報道官らだ。
ブリーフィングに臨んだキャンベルは、「中国とは競争があるが、衝突や対抗、或いは新冷戦は求めない」とし、責任をもって両国の競争を管理したいと説明。国務省も「競争が誤解や葛藤に飛び火しないようにするための開放的で権限のある意思疎通チャンネルを構築」し、「アメリカの価値感と利益を代弁し、地域および世界の安保問題についての話し合い」、「世界が直面する課題についての協力の模索」するなどの目標に言及した。
ブリンケン長官が中国を訪問するのは就任後初めて。米国務長官の訪中も2018年のマイク・ポンペオ以来のことだというから、米中関係の冷え込みを象徴している。それゆえにこの訪問を機に米中関係が前進するのではないかとメディアが期待を込めたのも無理からぬところだ。
だが原稿の冒頭で「サプライズが予測しにくい」と書いたのは、ブリンケン訪中で米中関係が大きく変化するとは思えない要素が、あまりにも多く見つかるからなのだ。
まず14日にはブリンケンは中国の秦剛外相と電話会談を行っているのだが、これを発表した中国側の反応は思いのほか冷淡で、シンガポールのテレビ『CNA』など多くのメディアが米中の温度差に焦点を当てて報じたほどだった。
もろ手を挙げてゲストを大歓迎するのは中国外交の基本だが、今回は様子が少し違っていた。6月16日、定例会見でブリンケン訪中について質問された中国外交部の汪文斌報道官は、「アメリカは力によって中国との関係が決められるという幻想を抱くべきではない」と厳しい表情で釘を刺し、歓迎ムードどころか警戒をにじませたのである。
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