入管法も改悪。難民の人権を軽視する法案を平気で通す日本の異常

 

難民認定の二次審査を行う「難民審査参与員」という制度設計の大いなる「欺瞞」!

ところで、難民かどうか──の審査を実質的に担うのは、「難民審査参与員」という存在になります。

この方たちの審査結果をもとに、最終的な難民認定を行うのが法務大臣とされます。しかし、いっぽうで必ずしも大臣は参与員の判断に従う必要もないとされています。

難民審査参与員とは、入管での一次審査で「難民でない」と不認定にされた外国人が、それを不服として申し立てる二次審査において、第三者的立場で「難民か、難民でないか」──を判定する役割を担う人になります。

法務大臣からはタテマエ的に任命される難民審査参与員ですが、任命されるのは知識人や有識者とされます(弁護士や大学教授、国際協力活動者など)。

ただし、だからといって、難民問題の専門家ではないため、難民申請者にとって難民認定されるかどうかは、参与員の判断に大きなバラツキがあり、俗にいう「難民認定ガチャ」とも揶揄(やゆ)されているのです。

こうした難民審査参与員は、現在111人が出入国在留管理庁に登録されているものの、参与員が担当する難民審査の「数」にも、これまた大きなバラツキがありました。

一部の元参与員だった人は「難民認定すべき──と審査結果を伝えたら、その後審査する難民申請者の審査数がみるみる減らされていった」という証言さえあるのです。

これはいったいどういうことでしょうか。

要するに「難民認定」したら、参与員の仕事がどんどん減らされる恣意的なシステムになっていた──というわけなのです。

「難民認定」なんてしたら、参与員のあなたには、これ以上もう審査をお任せしませんよ──という実態を示しているではありませんか。

この時点で明確な「難民認定排除」を行っていたのです。

参与員は、「ちゃんと厳格に難民認定審査やっていますよ」というポーズを示すための存在にすぎないわけでした。

難民審査参与員そのものが恣意的な入管のコントロール下にある!

また、今回の「改訂・入管難民法案」の強制送還を容易にする差別的・非人道的な重要条項の根拠となった──といわれる参与員自身の国会証言もありました。

2021年4月21日の衆院法務委員会における、自身が難民審査参与員としての実体験を述べた柳瀬房子氏の発言です。

「私自身参与員が、入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることが出来ません。私だけでなく、他の参与員の方約100名ぐらいおられますが、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です」

この柳瀬氏の国会証言を真に受けると、難民申請する人は、実際は難民に当たらない人ばかりで、難民申請を乱用している──と聞こえます。

ゆえに、2回も難民申請して却下された外国人は、さっさと母国へ強制送還すべきだ──という改訂入管法に盛り込まれた厳しく非情な論理がまかり通ってしまうのです。

しかし、その後入管庁が公表した柳瀬氏の難民審査数によれば、柳瀬氏が異常に多い難民審査にあたっていた事実も明らかになっています。

2021年には、全部で6,741件あった難民申請に対し、柳瀬氏がその20.4%の1,378件を一手に審査していたのです。

2022年には、全部で4,740件あった難民申請に対し、柳瀬氏が25.9%の1,231件を一手に審査していたのです。

穿(うが)った見方ですが、柳瀬氏に難民申請者の審査が集中しているのは、「難民認定しない難民審査参与員だからではないのか?」という疑惑が浮かびます。

柳瀬氏は、難民申請者1人あたりに、たったの6分しか費やしていない計算になる──という指摘までが飛び出しているのです。たった6分書類をめくっただけで、「この人は難民と違う!」とばかりの判断を下していたのではないか――という大きな疑惑です。

母国へ強制送還されれば、生命や身体に危険が及ぶ──という難民認定申請者をどう考えているのでしょうか。

先の元難民審査参与員だった人の「難民認定を出すと難民審査する申請者数がどんどん減らされた」という証言と見事に符合するのです。

どうやら、出入国在留管理局は、密室で相当ヤバいことを行っているのではないでしょうか。

こんな疑惑が飛び出しても、自民・公明・日本維新・国民民主は、入管法改定案を強行成立させたのでした。

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