京大の調査で判明。親の「経済格差」が子どもの発達にまで影響する可能性

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世界中の人々に多くの負の影響をもたらした新型コロナですが、先日発表されたある調査データはひときわショッキングなものでした。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、京都大学の助教らが行った子供の発達状態に関する調査結果を紹介。そこで改めて浮き彫りになった我が国の問題の解決を強く訴えています。

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

子どもの発達遅れも親の格差?

コロナ禍でのマスク生活や、人との接触の禁止が、子供の発達に影響を与えていたことが明らかになりました。調査を行ったのは、京都大学医学研究科の佐藤豪竜助教らの研究グループです。首都圏のある自治体の全認可保育所に通う、1歳または3歳の乳幼児887名に対し、追跡研究を実施(1回目:2017~19年、2回目:1回目調査の2年後)。コロナ禍を経験したグループとそうでないグループで、3歳と5歳児の発達の程度を比較、検討しました。

調査項目には、運動、手指の操作、言語理解、言語表出、抽象的な概念理解、対こども社会性、対成人社会性、しつけ、食事の9つの発達領域で構成された「KIDS 乳幼児発達スケール」を用いています。

分析の結果、5歳の時にコロナ禍を経験したグループは、そうでないグループと比べて、平均4.39ヶ月の発達の遅れていることがわかりました。一方、3歳児では発達の違いは認められませんでした。また、コロナ禍を経験したグループでは、3歳児、5歳児とも発達に個人差が大きいことも明らかになっています。質の高い保育を提供する保育園に通っていた子は、コロナを経験しても3歳時点での発達が良好でしたが、保護者が精神的な不調を訴える家庭の子は、コロナ禍で5歳時点の発達の遅れが顕著だったそうです。

5歳児は、親との世界から「友達の世界」に広がる時期で、社会性を身につける時期です。この頃に「友達の世界」を経験できなかったことや、マスクをつけていて相手の表情を汲み取ることができなかったことや、共に遊ぶ時間が制限されたことが、発達にネガティブな影響を及ぼしたのでしょう。

子供のマスクについては、昨年8月に世界保健機関(WHO)が「利用可能な限られたエビデンスに基づく」という前提の下、「5歳以下の子供にマスクは必要ない」と、早々に声明を出していたのに、日本の子供たちはマスクをつけづつけました。

科学的根拠に基づいた政策が評価されているドイツでは「6歳以下の子供にマスクの着用義務なし」とし、14歳以上には大人同様FFP2マスク着用の義務を課しました。違反をした場合はかなり高い罰金を払う政策が取られたほどです。

つまり、大人がマスクをきちんと着用することで、子供の成長過程への悪影響を最小限にとどめる努力をしていたのに、日本はそれをしなかった。今回の調査結果は、おこるべくしておきたといっても過言ではありません。

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