ビッグモーターみたいな“質の悪い企業”のCMをタレ流す民放テレビ局に未来などない

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社長の会見が炎上し、その後も数々の不祥事が明らかになりつつある、中古車販売大手ビッグモーター。印象的なテレビCMソングでおなじみだった同社は、いったいどんな悪事をはたらいてきたのでしょうか? 今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、ビッグモーターの不祥事を振り返るとともに、そんな悪質な企業のCMをタレ流してきた民放テレビ局を厳しく批判しています。

プロフィール伊東 森いとうしん
ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

中古車販売大手ビッグモーターの相次ぐ不祥事発覚が止まらない。ここにきて店舗前の街路樹消滅や自動車保険の契約捏造疑惑まで浮上

九州の販売店の営業部門に勤務する40代に男性社員は、街路樹が枯れる経緯について、西日本新聞の取材に対し、次のように語る(*1)。

まず経営陣が月に一度、「環境整備点検」と称し店を訪問。150点満点で採点され、人事やボーナスを左右する。チェックする項目は、敷地の周囲10メートル以内にごみや落ち葉、雑草がないかなど。

男性社員は、

「点数が悪いと店長は交代、主任はヒラに降格。雑草を抜く作業が嫌で除草剤を使い始め、落ち葉がなくなるように街路樹にもまくようになった。伐採のためのチェーンソーを備えた店もあった。罪悪感はなかった」(*2)

と語る。

ビッグモーター店舗前で街路樹や植栽がなくなったり、街路樹が不自然に枯れている例は、これまでに札幌市や神奈川県平塚市、大阪市、福岡県春日市などの店舗で確認されている(*3)。

街路樹への除草剤の散布が確認できた場合、器物損壊罪に問われる可能性がある。また国や自治体によっては土壌から除草剤成分が見つかった場合、警察に被害届を提出することを検討しているという(*4)。

ビッグモーターをめぐっては、保険代理店としての立場を悪用し、虚偽の自動車保険契約を結んでいた可能性があることが30日、判明。

個人が所有していない車両を対象とした保険契約が昨年、福井県の店舗で複数確認され、これが捏造にあたると判断された(*5)。

今後、最悪の場合、一定期間の業務停止や保険代理店の登録取り消しといった厳しい措置がなされる場合がある。

目次

  • 「ノルマ」という名の日本のブラック慣習
  • 損保ジャパンの問題は?
  • ビッグモーターのような”質の悪い”企業のCMを流すテレビ局に未来はない

「ノルマ」という名の日本のブラック慣習

ビッグモーターの不正の温床として、厳しい“ノルマ”があったことは間違いない。たとえば、同社では事故車両の修理費用に1台あたり14万円前後のノルマを課していた。

本来、修理費用というものは損傷の状況により決まるというのが正当であるが、しかしビッグモーターの場合、板金や塗装部門が修理工賃や部品から得る粗利の合計額が14万円前後になるように、求められていたという。

そもそも、ノルマというものが、日本において“悪しき慣習”として持ち込まれ、日本企業を“ブラック化”させる一因となっている。この、ノルマというものは、日本において、戦前・戦中に持ち込まれている(*6)。

しかしながら、そのノルマというものは、実際のところ、なんら法的意味をなさない。労働契約を結びことにより課される労働者の義務は「労働に従事すること」(民法・第623条)であり、ノルマのような「結果」を出すことは義務ではない。

むしろ結果を出す義務は組織の経営戦略を決定する取締役など管理責任者の役目であり、ノルマを労働者に押し付ける企業は「ブラック」と断じて間違いない。

また、ノルマの未達成でペナルティを課すことについては、たとえば賃金が減額される場合には、労働基準法第16条違反の違反行為であり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される(労働基準法・第119条第1号)。

しかしながら、日本の企業社会にはいたるところで「ノルマ」が散見され、日本社会を“総ブラック社会”化させている。

たとえば、東芝などでは「チャレンジ」と称した過大なノルマによる経営戦略を据えたことが、粉飾決算の原因となった。

もともと、「ノルマ」というものは旧ソ連下の計画経済下の産物であり、21世紀の時代に入ってもノルマが横行していること時代、日本経済の“非近代性”を物語る。

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