排外主義的な「スパイ防止法」自民案にチラつく統一教会の影。今こそ真にフルスペックの防止法を制定せよ

2023.08.18
 

「スパイ防止法制定促進サイト」を運営する団体の正体

スパイ活動を取り締まる法律は、世界の多くの国で制定されている。法律がない日本は少数派であるといえる。だから、自民党の推進派は、「諸外国では当たり前のことだ」と訴えている。「日本も、自分の国を自分で守れる『普通の国』になるべきだ」というのが推進派の主張だ。

だが、日本が「普通の国」となるには、簡単には乗り越えられない高いハードルがあることを忘れてはならない。「かつて侵略戦争を起こした、ならず者国家」だということだ。

もちろん、現在の日本は「平和国家」の看板を掲げている。第二次大戦の敗戦後、78年の長い間戦争を起こすことはなかった。開発途上国への援助など、国際貢献を重ね、一定の信頼を得てきた。

しかし、自民党政権は、先の大戦で過ちを犯した「ならず者」の末裔である。ナチスドイツのように、社会から完全に排除されたわけではなく、政界、財界、官界は戦前戦後の人的な継続性がある。そのため、自民党政権は、基本的に他の民主主義国の政府と比べて国内外で「信頼性」が低いということだ。

だから、日本国内の左派は、「憲法9条を守れ」と主張し続けてきた。「ならず者」の末裔である自民党政権は、日本国憲法で抑え込まれているから「平和国家」のフリをしているのであって、戦争放棄を定めた「憲法9条」が撤廃される改憲が行われれば、再び「ならず者国家」に戻るのではないかと疑っているからである。

かつて、自民党政権の政治家は、そのことをよく自覚し、権力・権限の行使には、極めて抑制的であった。安全保障関係の政策を進めるのには極めて慎重であったし、憲法改正に慎重な政治家も多かった。

ところが、安倍政権以降、自民党の「保守派」は「ならず者国家」と見なされてきたことに「無自覚」のようだ。むしろ「他国では当たり前」の暴力装置を自分たちにも持たせろと声高に主張するようになった。その上、権力の私的乱用を平気で行い、批判されたら開き直ったような態度をとる。品格のかけらもなく、先人たちがコツコツと築き直してきた国内外の「信頼」を、崩し続けてきた。このような政府に「スパイ防止法」を使わせたら、人権侵害をするに決まっていると思われても仕方がない。

「スパイ防止法」の制定を支持する人たちにも問題がある。例えば、「スパイ防止法制定促進サイト」を旧統一教会の関連団体が運営していることが、ネット上で指摘されている。

この連載では、安倍元首相の祖父である岸信介元首相が、旧統一教会系の政治団体「国勝共連合」(以下、勝共連合)を設立時から支援し、利用してきたことを指摘した。その岸元首相は、首相在任時の1957年に訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けたという。

【関連】政治家個人より「党」が悪い。自民と統一教会が“組織的関係”であるこれだけの証拠

岸元首相は、晩年の1984年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。1985年に、自民党が議員立法で「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」を国会提出した時、中曽根康弘内閣の外相だったのが、安倍元首相の父・安倍晋太郎氏だった。

勝共連合は、「スパイ防止法」制定のための運動を展開した。78年には「3000万人署名」を行い、79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」には久保木修己会長が参加した。勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。

そして、安倍元首相は、首相在任時に「スパイ防止法」こそ「政治的に困難」として手をつけなかったが、2013年に「特定秘密保護法」を成立させた。

特定秘密保護法とは、防衛、外交、スパイ防止、テロ活動防止の4分野で、安全保障に支障をきたす恐れのある情報を「特定秘密」に指定し、それに指定された秘密を情報公開しないことができるようにした法律だ。秘密を漏らした公務員や市民に対して最長10年の懲役刑が科せられる。ただし、この法律は「スパイ活動」そのものを取り締まることはできない。

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