加害者は5名。酷すぎる「いじめ」を受け続けた女子中学生が成功させた“反撃”の全記録

 

全国的に起きている被害者のたらい回しや放置

まずは被害者のケアやいじめ被害の受け止めの問題だ。まるでマニュアルでもあるかのように全国的にたらい回しや放置が起きている。そもそもで対立する必要がない学校や教育委員会と被害者側が教育機関側の対応の悪さで対立が生じることが多い。

被害側は助けてくれと訴えているわけで、当初は責めようとは思っていないのである。

本件では、担任の先生の目の前で起きていることも多く、被害者も加害者も両方平等に指導すべき生徒とみなすことで、被害側の不信感と加害側の行為の助長を生じさせた。

一方文科省は相談窓口を持っているのに、個別事案には関与しないと被害側にはコメントしていた。その実、この個別事案は関与しないというのはここ十数年同様の返信などを多くの事例で直面している。それ意味あるの?というのが率直な疑問だ。

臨床心理士や公認心理師の資格持ちの学校カウンセラーがいても、週1回数時間程度、決められた部屋にいるだけで、そこに相談にいけば誰からも見られてすぐに噂になるという問題もあり、なかなか相談には行けない。常駐してもらうにも、スクールカウンセラーアンケートによればおよそ9割が職場にストレスを抱えており、雇用も勤務評価も不安定で、スクールカウンセラー側からすれば常勤を求める声は極めて少ない。社会的要請から常勤などを求める声が高まっても、制度的仕組みや職場の理解、雇用など働く側の保証をしっかり作らなければ、絵にかいたなんとやらになるだろう。

結果的に、ケアは教員や親が行うことになるが、そこには医療としての治療が必要なケースもあり、大きな負担が被害者側にのみかかってしまうという問題が生じているのだ。

加害者についてはもっと深刻かもしれない。何らの対策も整備されていないのが現状だ。

例えば、加害者の中には家庭での虐待などの問題を引きずっているケースがある。そこまで行かなくても、加害行為に発展するような支配的に人間関係を形成する環境を親が作り出しているような誤った家庭教育があったり、反省の機会すら与えてもらえない可哀想な子もいる。

二度と加害を行わないためは、更生する機会と教育は必要不可欠だが、そのような機会も教育も受けられるような背景はまずないと言っても過言ではないだろう。

いじめを「犯罪」と呼び変える機運も高まっているが、仮にそうするのであれば、加害者は「犯罪者」「犯罪予備群」ということになり、社会に出るまでに更生する必要は当然にあるとは思えないだろうか。

加害者への教育や制度はほぼないのだ。

第二に、クラス内でいじめが起きた場合、被害者が適応障害やPTSD症状になってしまうケースがある。この場合、加害者がいる教室には当然入ることもできない。

そうでないとしても、「ごめんね」「いいよ」となるはずはない。長く苦しめられ地獄のような日々を過ごした被害者が、加害者の「ごめんね」の一言で許せと言う謝罪の会が行われていることもある。もはや、許しの強要だが、昨日までは酷いいじめを受けていた被害者がそれをしていた加害者と同じ空間で過ごす苦痛は計り知れないだろう。

結局、加害者はのうのうと楽しくクラスで学生生活を謳歌し、被害者はそこに入ることもできずに、保健室や別教室、家からのリモートで授業を受ける。中にはプリントのみで自習、それすらなく放置ということもある。

教室に入れたとしても、被害者は孤立し他の生徒とも距離をおかれるわけだ。

行事の時くらいは登校しようと、登校しても楽しいときだけ来るなんてと批判されたり、学校に登校できるのにズル休みをしていると誹謗中傷を受けることもある。これは教員からも受けることがある。

こうなっていくと、クラスにどちらが残るのか?という問題が生じるわけだ。

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