たった一人で面談にやってきた少女
土曜日。
Aさん(相談の女子中学生)は一人で事務所にやってきた。
弟はいつもの学童に預け、両親は仕事だという。
現在の中学校での出来事を、カレンダーを使いかなり詳細に話してもらい、小学校はホームページで行事表を出していたので、これを見て小学生の時にどういうことが起きたのかも話してもらった。
これを時系列でまとめて、年間1回行われる「生活アンケート」でいじめがあるとチェックした年度や学校内のヒエラルキーなども教えてもらった。
スマートフォンで撮った写真の中には、情報を補強する写真もある事から、これも提供してもらって詳しい被害の時系列文書が出来上がった。
私からは少し難しいかもしれないから、大まかな法体系や中学校が公開しているいじめ防止基本方針についての説明をした。
また、証拠取り用に無償レンタルしているICレコーダーと返却用のレターパックを渡した。
Aさん 「親には話した方がいいんですか?」
阿部 「話した方が断然いいよ。無理なら無理なんだけどね。」
Aさん 「話し方がわからない。」
阿部 「葛藤しているね。ならば、1つ試してみようか。相談したいんだよね」
Aさん 「はい、相談したいです」
私は私が原案者となっている『いじめ探偵』(小学館・榎屋克優)1巻2巻とNPO法人ユース・ガーディアンの私の名刺を手渡した。
阿部 「これを、机の上にでも置いておけばいい。もちろん、読んでもいいし、サインも今書くし」
普通の親なら、モロいじめがテーマの漫画とそれに直接介入する団体の名刺があれば、ピンと来るはずだ。
阿部 「あと、駅まではそこのスタッフが送るけど、帰宅したらちゃんとメールするんだよ」
別室で作業していたスタッフが言うには、相談にやってきたときと、帰宅するころでは、Aさんは声のトーンも言葉のメリハリもついて、少し元気になっていると見えたそうだ。
「全て忘れてほしい」。母親からの突然の電話
月曜日のランチタイム、Aさんのお母さんから電話があった。内容は、親で何とかするので全部忘れてくださいということと漫画の代金はお支払いするので振込口座を教えてくださいということだった。
漫画は差し上げたものなので、押し売り詐欺業者にしないでくださいと断り、何とかするというのはどうやって?と質問してみた。
すると、また電話しますといって電話を切られてしまった。
次の電話は、午後5時過ぎだった。
ランチタイムの電話とは声の感じが全く違う。どうやら、私が出たテレビ番組をネットで知ったようだった。今後どのように進めていけばいいかアドバイスをくださいということになった。
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