アメリカの“対中外交戦略”に次々と浮上する「不都合な問題」とは?

Washington,,Dc,Us,-,Mar,13,,2023:,Us,President,Joe
 

米サンフランシスコで日本時間12日に始まったアジア太平洋経済協力会議(APEC)の期間中に米中首脳会談が予定されていて、懸案山積の国際情勢のなかで、大きな注目を集めています。米国と中国それぞれの思惑について解説するのは、メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』著者で多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授です。大統領選挙を控え、中国に甘い姿勢を見せられないバイデン大統領が中国からロシア批判やハマス批判を引き出すのは容易ではないと分析。国際情勢はいま、中国にとって強い追い風となっていると伝えています。

米中首脳会談を前に、降ってわいた不都合な問題に翻弄されるバイデン政権

イスラム武装組織ハマスの越境テロ攻撃から1カ月が過ぎた。パレスチナの人々が暮らすガザ地区へのイスラエル軍の報復攻撃は凄まじく、崩壊した建物の瓦礫をかき分けるパレスチナの人々の映像が連日のように伝えられている。その惨劇は、ロシアによるウクライナ侵攻で見慣れた光景とは、また次元の異なる破壊として人々の目に焼き付けられている。

多くの懸案が世界に山積するなか、今月12日からアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議がサンフランシスコで開催される。注目は、会議に合わせて行われるジョー・バイデン大統領と習近平国家主席の対面による二度目の首脳会談だ。国際政治の一つのハイライトだ。

西側メディアの関心は、例によってイスラエル・パレスチナ問題とロシア・ウクライナ問題をめぐる二大国の駆け引きに向けられている。即ち、中国をいかにロシア批判やハマス批判に引き込めるかというバイデン政権の思惑だ。

だが、中国の優先順位はそうではない。米中首脳会談はあくまでアメリカと中国の「二国間関係を整える場」と考えているからだ。中国が獲得したいのはトランプ政権下で激増した対中制裁関税の解除や安全保障を理由とした輸出・投資の制限の撤廃である。安全保障面では、台湾問題を利用して中国をけん制する動きを止めさせることだ。

いずれも歩み寄りは簡単ではない問題だ。大統領選挙を控えたアメリカでは、民主党と共和党との対立が激しさを増し、与野党が協力できる材料は乏しい。だが、そんななかにあっても対中国では両党議員が「強硬」でまとまっているのがアメリカ政治の特徴だ。

先月は下院議長の選出で混迷し、共和党の内部で亀裂が浮き彫りになった。そしてここでも党の団結を呼びかけるために引き合いに出されるのが中国だ。そもそもアメリカ人の対中感情の悪化や議会の雰囲気を考慮すれば、バイデン政権が中国に柔軟なメッセージを発することは期待できない。

また一方の中国にもアメリカに歩み寄る気配は感じられない。デカップリングやAUKUSなど、バイデン政権の繰り出す仕掛けにはうんざりしながらも、慌てて妥協する要因とはなっていないからだ。

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