あと数年で到来する“日本のマンション大崩壊”時代。都市部に広がる「廃墟だらけ」の風景

 

集合住宅の所有者による合意形成の難しさ!

マンションを対象とした「区分所有法」では、大規模修繕には「普通決議」と「特別決議」があります。

一般的な 大規模修繕 は管理組合の総会で、過半数の賛同が得られれば行える「普通決議」になります(法改正前は4分の3の決議を必要とした)。

ただし、共用部の大きな変更を伴う修繕の場合は、「特別決議」を経なければならず、この場合は4分の3の総会決議が必要になります。

しかし、大規模修繕にあたって、これまで積み立ててきた修繕積立金では賄いきれず、新たな負担金が生ずる場合は、たとえ総会の過半数の決議で行えるとあっても、スムーズに賛同が得られないケースがしばしば発生しているのが実情です。

また、全戸数が住居利用なら、資産価値保全としての住民理解も得られやすいのですが、1階や2階に店舗やクリニック などが入っている場合、大規模修繕などの合意形成は営業上の利害が絡まってくるぶん、難しくなります。

新たな負担金を伴う大規模修繕が、予定通り行えなくなると、当然ですが大規模修繕する箇所が限られます。

従来の修繕積立金で出来る範囲での修繕をするだけですから、取り残される劣化部分が大きく残ります。

こうした事態が続くと、マンション全体の劣化や老朽化が急速にすすむわけです。分譲マンションにおける合意形成の難しさがここにあるのです。

そのうえ、老朽化したマンションを取り壊して、新たなマンションに建て替えようとする場合は、現行法では5分の4の総会決議が必要となり、さらには建て替え費用の一戸当たりの平均負担金が2,000万円ともいいますから、解体や建て替えはますます難しいことになります。

実際、日本で解体&建て替えに成功した事例は、現在たったの300棟弱程度しかないのです。

管理組合内で合意形成がすすまず、10年や20年という長期間にわたってもめているマンションもあります。

政府も大規模修繕や建て替えにおける決議条件を緩和するべく、区分所有法の改正案が検討されていますが、まだ実現には至っていないのです。

また、たとえ5分の4の総会決議での合意形成ができそうな、都心部の利便性の高いマンションであっても、旧法や旧規定で建てられたマンションの場合は「既存不適格物件」として、建て替えが不可能な物件もあります(現在の法律や規定に適合させたマンションしか建てられないため)。

この場合は、マンションを解体して、敷地を更地に戻して、土地を売るという選択肢しかありません。

売ったお金を分配することになりますが、都心部の利便性のある土地であれば高値で売れるものの、高層で大きなマンションであるほど、解体費も数億円単位でかかるため、土地販売の収益を期待しても、解体費用と差し引きすると、さほどの果実は得られなくなります。

建蔽率や容積率に余裕のある場所に建つマンションならば、より大きなマンションに建て替えて、一部の部屋を新規に売り出すことで所有者の負担金を減らすことも出来ますが、そういう物件は都市部には少ないのも現実なのです。

この記事の著者・神樹兵輔さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • あと数年で到来する“日本のマンション大崩壊”時代。都市部に広がる「廃墟だらけ」の風景
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け