“次期総裁”候補は「落語」の妙手?超コミュ石破茂氏の明快で判りやすい語り口

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パー券裏金疑惑で信用を地に落とした自民党にあって、国民から根強い人気を誇る石破茂衆院議員。事実、各メディアが実施する世論調査でも、次期総裁候補にその名が上がるのがここ数ヶ月の常となっています。そんな石破氏のコミュニケーション能力を絶賛しているのは、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長の引地達也さん。引地さんはメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で今回、かつて自身が記者として石破氏と接した経験を紹介しつつ、彼の演説や語り口が評価される理由を解説しています。

その政治家の「落語」を「イシバナシ」と呼んでみる

「『わーい』なんて舞い上がるほどおめでたくはない」。

日本経済新聞社とテレビ東京の12月の緊急世論調査で「次の総裁にふさわしい人」との質問への答えがトップだった自民党の石破茂元幹事長は24日配信のラジオ番組でそう語った。

否定したとはいえ、「わーい」という発言にはちょっとした戸惑いと、石破氏らしさのエッセンスが効かされ、いつか聞いた既視感に誘われる。

記者時代に石破氏の地元、鳥取に赴任していた私は、地元の演説や講演会で何度もその「わーい」のような発言を聞いてきた。

石破氏の演説には、有権者の「声」を代弁する口上、自民党守旧派の声、改革派の声、そして自らの心の声、それらが声音やトーンを変えながら、一人何役かのやりとりとして伝えられる。

時には擬態語や擬音語も動員されることもあり、そのワールドは落語のような雰囲気になることもある。

結果、聞き手からは分かりやすく、石破氏の演説の上手さ、巧みさとして評価されてきた一面もある。

これはコミュニケーションの話。自民党の派閥のパーティー券収入をめぐる事件について語るつもりはないが、歯切れの悪い自民党の安部派の方々に比べ、石破氏の立場はコミュニケーションの優位性を得たのは確実だ。

現在無派閥の石破氏は鳥取選挙区区で1986年に29歳で初当選し、以来12回の当選を重ねている。

農林水産相、防衛相や自民党幹事長の要職を務めながらも現在は無派閥で傍流にいる発言者として、メディアとしては頼もしい存在かもしれない。

弁舌はなめらかで、厳しい質問にも、アイドルの話にでも、応答する。

「落語スタイル」の語り口は政界では珍しいタイプだと思う。

冒頭のラジオで石破氏は「『イシバノミクス』という偉そうなことをいうつもりはないが、本来の資本主義に戻す」(日本経済新聞25日朝刊)と語り、経済政策の修正に意欲を示したが、ここには「アベノミクス」が「偉そうなこと」だったとの指摘とも取れるのが面白い。

それはさておき、政治家のコミュニケーション、わかりやすい国民への説明のためにも、私自身は「イシバノミクス」よりの「イシバナシ」(石破+話)のスタイルと内容に注目していきたい。

最近のテレビ番組に出演した時も、自らが当選1回目だった頃のエピソードを派閥の幹部の声音で説明する。

当時の幹部曰く「当選1回の名前をなんて読んだら分からないやつのパーティー券なんか売れっこないよな」とのことで、石破氏のパーティー券を引き取った話。

今回のパーティー券問題で、該当するパーティー券を購入した人の声としては、「派閥の運営に使ってくれるんだろうねー」と明るい声で表現する。

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