元旦の能登地震では、志賀原子力発電所がある石川県志賀町で震度7を観測。ところが原発の状態について、政府や北陸電力の発表は二転三転。放射線量を計測するモニタリングポストは一部が使用不能になり、国土地理院が公表した空中写真も原発部分は雲がかかって確認できない状況です。SNSや大手ニュースサイトのコメント欄では、「志賀原発は震度7でも壊れなかった。日本の原発は安全だ」といった勇ましい擁護も見られますが、果たしてそれは真実なのでしょうか?今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんは、科学的な見地から真逆の見解を持っています。
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
原子力発電所の基礎知識「大地震で簡単に壊れます」
1月1日に石川県能登地方で発生したマグニチュード7.6の地震で、揺れの目安となる「最大加速度」が2828ガルだったことを報告する記事です。場所は、志賀原発のある志賀町です。
地震に関しては、マグニチュード、震度、最大加速度、などの指標があるため、難しいのですが、
- マグニチュード:地震の総エネルギーの量(対数スケール)
- 震度:建物などへの影響を考慮して算出する数字(1から7、対数スケール)
- 最大加速度:加速度計で測定する数値
と覚えておくと良いと思います。
この数字を見て思い出したのが、原発の耐震設計基準です。原発の耐震基準は、600~1,000ガルと定められており、この手の大きな地震が直撃すると壊れてしまうのです(「想定外」の地震多発、見直し必須の原発の耐震基準)。
2,000ガルを超えるような地震が実際に観測されているにも関わらず、なぜ、原発の耐震基準がそんなに低いのかが不思議ですが、理由としては、
- そんな地震は滅多にない(事実)
- 活断層を避けて原発を作れば、そんな地震には遭わないだろう(仮説)
- 耐震基準を高くすると、コストが跳ね上がって、原発が割の合わない発電方法になってしまう(事実)
の三つがあります。