避難計画は絵に描いた餅。能登半島地震「震度7」で露呈した原発の無理筋

Kumamoto,,,Japan,-,April,17,:,The,Mountain,Town
 

1月1日に発生し、最大震度7を観測した能登半島地震。200名以上の命が奪われ、多くの方が避難生活を余儀なくされています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんが、地震の「震度」について詳しく解説。さらに「震度7」は決して想定外の地震ではないとした上で、その揺れが計測された際に即時に取るべき3つの動きを提案しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

地震の震度について

先週、地震の三つの尺度(マグニチュード、震度、最大加速度)について書きましたが、震度について、深掘りをして勉強したので、ここで解説します。

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震度は、正式名は気象庁震度階級で、日本だけで使用されている、独自の「地震の激しさ」を表す階級です。マグニチュードが地震の総エネルギー、最大加速度が地震計で測定される加速度を表すのに対して、震度は人や建物への影響を考慮した数字になっている点が特徴です。

以前は、人の体験や被害状況による判定を(人が)行っていましたが、それだと主観が入ってしまうし、迅速な救助活動の必要性の判断が出来ないため、1996年4月からは、計測震度計という自動計測器により自動測定されています。

計測震度は、資料1に詳しく書いてありますが、基本的には加速度計に記録された波に地震波の周期による補正を加えた上で、(東西、南北・上下の)3成分の波形をベクトル的に合成した上で、ベクトル波形の絶対値がある値 a 以上となる時間の合計を計算した時、これがちょうど0.3秒となるような a を求めた上で、

I = 2 log a + 0.94

の計算で求めます。

建物などにかかる力は、加速度と時間の積で決まるため、0.3秒という時間の要素を加えているのです。

そして、気象庁が発表する際には、この計測震度を以下のように震度階級として発表することになっています。

  • 震度5弱: 4.5 <= I < 5.0
  • 震度5強: 5.0 <= I < 5.5
  • 震度6弱: 5.5 <= I < 6.0
  • 震度6強: 6.0 <= I < 6.5
  • 震度7:  6.5 <= I

例えば、a が125ガル(ガルは加速度の単位)だった場合、Iは5.13になり、震度は5強として発表されます。

計算式に log が出てくる点がとても重要で、これは震度が対数表示であり、震度が1上がるたびに、加速度は10の2分の1乗、約3.16倍になります。

つまり、震度6弱と震度7の間には、建物などにかかる力で3倍以上の差があることになります。

先週、原発の耐震基準は、福島原発事故以前は600ガルだったと書きましたが、上の式に a=600 を代入すると、I=6.49となり、震度6強まで耐える設計になっていたことが分かります。

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事故後は、この値が1,000に修正されましたが、同じく計測震度を計算すると I=6.94となり、震度7のことを意識した基準になっていることが分かります。

1ガルは、0.01メートル毎秒毎秒ですが、重力加速度をガルで表すと980ガルになります。つまり、震度7の地震においては、1Gに近い力が建物などにかかることを意味しており、原発や発電機の配管などが壊れても当然です。

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